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系列サプライヤーの収益回復からも見えてくるホンダの変身

コミュニケーションは著しく改善、開発・コスト効率と「らしさ」両立へ
系列サプライヤーの収益回復からも見えてくるホンダの変身

ホンダの八郷社長

 ホンダへの供給が多い部品メーカー11社の2018年3月期連結決算は、7社が売り上げ増を見込む。日本や北米、アジアでの受注増が売り上げをけん引する。一方で、7社が営業減益と予想。先行き不透明な状況の中、将来に備えるために研究開発費を積み増すほか、他メーカーとの競争激化による単価減などが響く。

 増収を見込む7社のうち、テイ・エステック、日信工業、武蔵精密工業が営業増益と予想した。3社ともにホンダ向け部品の生産数増加や製品構成の変化が奏功するとみる。

 テイ・エステックは日米アジアでホンダ向けのシートや内装材の生産が増えると予想。「ホンダをはじめ海外メーカーに選ばれるような新製品を供給し続けたい」(井上満夫社長)とした。日信工業はアルミを生かした軽いロアアームなど高付加価値な部品の生産体制が整い、北米や中国のホンダの拠点を中心に受注が見込めるとした。武蔵精密もパワートレーンに用いる差動機構部品が、米中などでホンダ向けを中心に受注が増えるとしている。

 ショーワは16年度に計上したガススプリング製品の品質対応費用がなくなり、営業黒字に転ずる見込み。

 営業減益予想の7社の中でケーヒンと八千代工業は、競争激化に伴う価格下落ではなく、ホンダとの関係強化のために研究開発費を増やしたことがおもな理由。ケーヒンは研究開発費が29億円利益を押し下げるとみる。「ホンダの電動化方針にキャッチアップできる強いシステムサプライヤーになれるように、開発力を強める」(横田千年社長)とした。

 八千代工業も研究開発費の積み増しで約10億円の利益押し下げを見込む。燃料の揮発を抑えたプラグインハイブリッド車向けの軽い樹脂製タンクや、燃料電池車向け水素タンクの開発など、ホンダの電動化の方針に向けた開発を進める。
               


日産系はどうだ?


 日産自動車への供給が多い部品メーカー6社の2018年3月期連結決算は、4社が営業減益を見込む。国内市場は堅調に推移するものの、海外ローカル企業との競争激化や円高による為替効果の縮小を想定する。各社は、生産性の向上や収益力を高めるための投資に取り組み、海外で稼げる体質の強化を図る。

 日産のミニバン「セレナ」や「ノート」が16年後半から好調に推移している。今期も引き続き、これらの車種が伸長すると予想され「国内市場は前期よりもプラスに動く」(ヨロズの佐草彰取締役副社長執行役員)との見方が大勢だ。

 足元の円相場は1ドル=113円で推移しているが、為替による収益の変動要因を最小限に止めるため、ヨロズとパイオラックス、アルファは今期の為替レートを105円に設定した。「前期は為替の影響を含めると、売上高で60億円のアゲンストになった。今期は保守的に見た」(パイオラックス)と、円高方向で安全性をみる傾向が強い。

 各社は海外での収益性を確保するため、生産性の向上や設備更新などに取り組む。唯一、増収増益を見込むアルファは拡充した海外拠点の生産効率化を一層強化して収益基盤の強化を図る。

 ヨロズは米国アラバマ州の生産子会社を当初予定より1年以上前倒しして、1月からプレス部品の生産を始めた。「テネシー州の工場の負荷が高かった。生産補完体制を早期に整えて、生産性を高める」(佐草取締役副社長執行役員)としている。

ファルテックは英国生産子会社の機械設備の更新を前期に引き続き実施する。
                 
日刊工業新聞2017年5月16日
中西孝樹
中西孝樹 Nakanishi Takaki ナカニシ自動車産業リサーチ 代表
ホンダ系サプライヤーの収益性に立ち直りの兆しが見えてきた。メガシフトを大前提に進めた前経営陣とは異なり、ホンダらしさの追求を優先し、先行開発段階からホンダ系サプライヤーを巻き込む開発スタイルに現在のホンダの設計プロセスが変わった。機能部品やシステム部品に関して結果としてメガシフトが進むことには変わりはなくとも、サプライヤーとホンダのコミュニケーションは著しく改善を示し、この協業が、開発・コスト効率とホンダらしさの両立に結び付くだろう。

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