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お寺さん崩壊

住職・水月昭道氏インタビュー「兼業も難しくなっている」
お寺さん崩壊

水月昭道氏

 ―冒頭から「寺がつぶれた」というセンセーショナルな事例を取り上げています。
 「地方では寺がつぶれる現象は以前から表れていた。業界内で“廃寺”はそれほど珍しくない状況となっている。ただこれまで『坊主丸もうけ』というイメージもあって、世間ではなかなか理解してもらえなかった。それがここ数年、メディアを通じて寺の維持、運営に厳しさが増していることが徐々に伝わり、ようやく執筆できる時機がきた」

 ―寺の運営にも財務やガバナンスが重要と説いています。
 「寺院は宗教法人だから非課税というイメージがあり、運営が楽と誤解されることがある。しかし、政教分離の原則もあり、学校法人などのように補助金を受けていない」

 「本堂の維持管理など費用の捻出は全て自助努力となる。収入源は檀家(だんか)によるお布施や年会費に頼らざるを得ない。地震など天災が起きる前から寺をどう維持していくかという方針を立てなければ、すぐに立ち行かなくなる。また法人としての経費を差し引くと個人の収入はごくわずかだ」

 ―今では兼業での運営が当たり前となっているようです。
 「以前から寺院運営のため教員や公務員などと兼務する人は多かった。幼稚園や保育園を宗教法人が運営するのは、そうした側面もある」

 「ただ、昔のように法要があるからという理由で仕事を抜け出せない労働環境となり、兼業も難しくなっている。そうなると寺の運営も厳しくなり、自転車操業による運営か廃寺かという選択肢を迫られる」

 ―寺の維持、運営には檀家が深く関わっていると感じます。
 「特に地方の寺院は檀家の数が収入に直結する。これまで檀家との間でお布施など、ある程度の相場が何となく決まっていたので寺院は収入の見込みを立てられた」

 「ただ、寺院と檀家との関係性も年々希薄になりつつある。葬儀になって初めて接点を持つというのも珍しくなくなった。葬儀社のアドバイスが基準となり、寺院側も言い値に従わざるを得ない状況だ」

 ―現代の寺院運営は自営業やサービス業に似ているような印象も持ちます。
 「寺院は家族経営によって成り立っていることが多い。職住一体で檀家から声がかかれば、すぐに駆けつけなければならない点は自営業に似ている」

 「また跡継ぎの問題が常について回る。ひとたび跡継ぎ候補がいなくなれば、その時点で寺院の継承が難しくなる。ただ寺院は地域における精神的なつながりや社会のよりどころとしての役割も担っている。それ故にサービス業とは異なるということを意識しなければならない」

 ―私たちは寺とどのように向き合うべきでしょうか。
 「今は寺を維持する前提が成り立っていない状況だ。寺としては財務面を含め曖昧となっていた部分をある程度オープンにし、敷居を低くする必要がある。檀家としても法要や寺の存続危機となって初めて関わるのではなく、普段から互いに寄り添った関係性を築くことが地域社会の維持の観点からも必要ではないだろうか」
(聞き手=西部・高田圭介)
【略歴】
水月昭道(みづき・しょうどう)97年(平9)長崎総合科学大工卒、04年九大院博士課程修了。人間環境学博士。博士課程修了者の就職難などをテーマとした著書に『高学歴ワーキングプア』(光文社)がある。現在、福岡県内の浄土真宗本願寺派寺院の住職を務め、執筆活動や講演も行う。福岡県出身、49歳。最新著書『お寺さん崩壊』(新潮社)
日刊工業新聞2017年5月15日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
うちの実家でもそうなのだが、田舎ではなかなか菩提寺を代えるのは難しい。檀家としてはより通いやすかったり、町内になるお寺さんの方が日頃からの関係性も深い。ただ簡単に菩提寺を代えるようになると淘汰が一層加速する。関係性を築くと一言で言ってもなかなか難しい問題ですね。

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