10年以上は当たり前。全面改良した新型トラックの投入相次ぐ
新排ガス規制の対応に。そしてどうなる自動運転への対応
外資勢も「日本市場」に照準
UDトラックスも4月に13年ぶりに全面改良した大型トラックの新型「クオン」を発売した。性能を高めた機械式自動変速機(AMT)「エスコット・シックス」を搭載。迅速なギアチェンジにより運転性能を高めた。燃費基準は社内試験で現行車比5―6%改善した。東京地区希望小売価格はタイヤ3軸タイプの標準型で1885万円。新型車発売により、国内大型トラックのシェア25%(現状約18%)獲得に弾みをつける。
「スウェーデン・ボルボグループの最先端技術を融合した。運転性能や燃費、安全性といったトラックの五つの基本要素を一歩先に進められた」―。村上吉弘社長は新型車に期待を込める。
新型クオンは、ミリ波レーダーに加え、社内カメラで二重監視する衝突被害軽減ブレーキといった機能を搭載し安全性能を高めた。また、部品見直しによる車両の軽量化で積載量は最大200キログラム向上した。最新のテレマティクスで車両を遠隔診断して整備時間を削減し、稼働率を高めるサービスも展開する。
三菱ふそうトラック・バスは5月に発売を予定している大型トラック「新型スーパーグレート」のエンジンや安全機能などをすでに公開している。
エンジンは従来より最大で約42%軽量化。3次元の地図情報や全地球測位システム(GPS)と連携した省燃費走行システムと連動し、燃費も最大15%向上した。新開発のオートマチックトランスミッション(AMT)を全車に搭載し、前方車との車間を保持しながら自動で発進・停止する機能も採用。将来の自動運転に向けて道筋を付けた。
新型スーパーグレートは21年ぶりの全面改良。燃費を最大15%改善し、同社では5年間で180万円のコスト低減につながるという。アイドガン・チャクマズ副社長は「車内の騒音は高級乗用車レベル」と乗り心地にも自信をみせた。
エンジンは排気量1万700ccと同7700ccの2タイプを用意。双方とも新設計のターボチャージャーを搭載した。重量はそれぞれ従来型の同1万2800ccタイプに比べ約13%減の1130キログラム、約42%減の760キログラムと軽くしながらも高出力を保った。
新開発の機械式AMT「シフトパイロット」はチューニングを最適化した。従来よりも変速が滑らかになった。
安全機能では、自動発信・停止機能のほか、左側のウインカーを付けるとレーダーが歩行者などを感知し、ドライバーに注意を促す機能も国内で初めて搭載。加えて、衝突被害軽減ブレーキや、ドライバーのまぶたの動きなどを監視して注意力の低下時に警告を発する機能も付与した。
新排出ガス規制では、排出ガスに含まれる窒素酸化物(NOX)を現状の基準と比べ約4割減となる1キロワット時当たり0・4グラム以下に抑えることが求められる。
「『レベル2』で開発すべき技術がたくさんある」
一方、自動運転については現状、各社はやや慎重な姿勢をとる。商用車は一般の乗用車を異なった自動運転の難しさもある。
いすゞの片山正則社長は「例えば大型トラックは1500車型あり、積載率が100%と0%の状態では重さが半分になり重心位置も異なる。今はプロのドライバーが雨で道が滑りやすいなど状況を把握しながら運転している状況で、完全無人運転を想像するのは難しい」
ただ「人は素晴らしいシステムだが長時間の運転で注意力が散漫になるなど弱さもあり、まずはそこを支援する。自動運転を目指すが、運転手の負担軽減につながる『レベル2』の段階で開発すべき技術がたくさんある」と話す。
日野自動車の市橋保彦社長は「いつ何ができるかは明言できない。ただ輸送の効率化や運転手の負担軽減につながる安全機能を強化していく。そうした技術の積み重ねが将来の自動運転につながると思っており、“手の内化”していくことが重要になる」という。
いすゞと自動走行や高度運転支援の分野で基礎技術を共同開発するが、「その先の商品化については何の話し合いもしていない。協調領域の拡大については個々に判断していくことになる」(市橋社長)。
三菱ふそうトラック・バスのマーク・リストセーヤ社長も「手を離してトラックを運転する完全な自動運転は非常に時間がかかる。ただ先頭車両をドライバーが運転し、無人の後続車が自動追走する隊列走行は早く実現できる」とみる。
しかし「社会的な影響が大きく、競合他社や当局、保険会社との協議も必要になる。自動運転で事故が減ることは統計でも分かっており、運転手の負担も軽減できると思う。ただ運転を機械やシステムに委ねて本当に反応するかは分からない。これは倫理的な問題で、メーカーではなく社会が判断することになるだろう」とメーカー個別の問題ではないと指摘する。
国とメーカー、さらには世論の声が交差するポイントはどこで訪れるか。