「連続して1時間、昼休みが取れるようになる」 それでも通販対応に追われる日々

物流3社と悩ます「ラストワンマイル」の非効率さ。コンビニなどの活用も

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宅配の増加で現場は混乱している
 日本の物流網の軋み(きしみ)が顕在化した。インターネット通販の普及による荷物の増加と人手不足で、現場は逼迫(ひっぱく)する。配送の高速化や細かな時間設定、再配達など過剰とも言えるサービスも追い打ちをかけた。物流効率化に向けて進めた拠点網の統合も、アスクルの火災でリスクに直面した。世界的に見ても水準が高い物流網を維持するには、物流業者、倉庫業者、ユーザー企業それぞれが変わる必要がある。

 「連続して1時間、昼休みが取れるようになる」。ヤマト運輸は春闘で時間帯配送指定の見直しなど、労働環境を抜本的に改善することで合意した。6月中に、昼休みの時間帯に当たる12―14時の時間帯指定区分を廃止する。

 「12―14時指定の荷物は少ないが、1個でもあれば作業は発生する」(関係者)。現場では少量の荷物に振り回され、10分間くらいの休憩を細切れにとるのが日常だった。昼の時間指定の見直しは、需要と作業負担を天秤にかけた結果だ。

 山内雅喜ヤマトホールディングス社長は春闘で働き方が問題になる前から「労働力が逼迫(ひっぱく)しており、本格的な対応が必要」との認識を持っていた。競合の佐川急便がネット通販大手のアマゾンの配送から撤退し、2015年ごろから荷物がヤマトに集中。現場への負担が急激に増した。

 その佐川急便も16年末には荷物の増大で全国的に集荷や配達の遅延が発生。繁忙期を中心に人繰りには苦労しており、根本的な人手不足の解消には至っていない。

 各社とも荷物が増えても収益増には、つながっていない。日本郵便は17年度に大口顧客向けに運賃の引き上げを実施する計画だが、繁忙期の期間雇用従業員の拡大によるコストの増大で営業利益は横ばいを見込む。長門正貢日本郵政社長は「(値上げでは)間に合わないコストプッシュが来る」と危機感をあらわにする。

 3社を最も苦しめるのは、地域拠点から個人宅への配送である「ラストワンマイル」の非効率さだ。日々変化し、システム化が難しいラストワンマイルの配送作業を効率化するのは容易ではない。在宅率の低下で再配達も増え、物流事業者を圧迫する。

 ヤマトは基幹システム「NEKOシステム」の刷新で、人工知能(AI)を活用した効率的な配送ルートの策定などを進めている。異業種間の連携で、再配達を減らす宅配ボックスも設置が広がる。物流網が危機に直面する中、これを回避しようという動きが、業界を超えて始まった。
(文=高屋優理)

日刊工業新聞2017年4月6日

COMMENT

ネット通販市場の拡大が不可避的のなかで、物流の危機を乗り切るためには官、民、消費者みんなで解決策を考えなくてはならない世界だ。売る側は受け取りの時間や場所など選択肢を増したり、消費者は自宅にロッカーを付けたり。またスーパーやコンビニなど流通業は荷物の受け取り拠点としての機能を検討すべきではないかだろうか。

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