「出社回帰」の波に乗れ!オフィス家具メーカー、拡大する「改装需要」狙う
国内のオフィス市場に「出社回帰」の波が到来し、改装需要が拡大している。在宅勤務と出社のハイブリッドワークが定着し、経営者が職場空間を人的資本投資の対象として見直し始めている。こうした点を追い風に、オフィス家具メーカーは提案を強化している。自社の事務所を実践の場として、オカムラは共創拠点を増床し二つの事業部を同居させ、イトーキは本社を刷新した。自社の働き方改革を進めるとともに、ショールームの機能を高める。(地主豊)
オカムラ 可動性高い什器採用 部門連携を高度化
オカムラは中核拠点のラボオフィス「CO―DO LABO」(東京都港区)を改装した。従来の約7割増となる2395平方メートルに増床。主軸のオフィス環境事業本部が在籍していたフロアに、物流システム事業本部が加わった。同拠点に所属する従業員は2・5倍の350人に増員。事業部の垣根を越えた社内共創を図る。
同ラボオフィスは可動性の高い什器(じゅうき)で構成し、空間をフレキシブルに変化させられるようにした。特定グループにエリアを割り振るグループアドレス制を採用。フリーアドレスより座席は限定されるが、チーム内の情報共有が円滑化し高度な部門連携につながる。
コロナ禍で広まった出社制限の影響で、各企業では社内のコミュニケーション不全が顕著化。出社率低下が課題視されるようになった。オカムラの経営者アンケートによると、経営課題の1位は人材育成で、優秀な人材の確保、社員の生産性向上が続く。「オフィス投資は人的資本投資であり、改装が企業にとって重要な課題になってきた」(中村雅行オカムラ社長)といえる。
今後は出社率だけでなく「オフィスに集うからこそ生み出される価値が重視される」(同)と見て、組織強化の環境を提案する。社内外の開かれた交流を促そうと、新製品のラウンジテーブル「シンフォニア」とソファシリーズ「クラーク」を12月に投入。企業の顔となるラウンジ空間に存在感のある家具を置くことで、社員の生産性・モチベーション向上を図る。顧客の強い組織づくりをサポートする方針だ。
イトーキ 本社ショールーム刷新 社員運営カフェで交流促進
イトーキは本社兼ショールームの1フロアを改装し、「イトーキ デザインハウス」に改名した。次世代を見据えてリブランドし「明日の『働く』をデザインする場所という思いを込めた」(湊宏司社長)という。
本社の11階から13階の全3フロアを2022年から順次リニューアルしてきた。コーポレート・営業・空間デザイン部門など、改装前の1・4倍以上にあたる社員1100人強が在籍する。24年に改装した11階には飲食しながらコミュニケーションを図る場所や、社員が運営するカフェ仕様のカウンターを設けた。
働き方の多様化が進み在宅勤務が浸透した一方、「経営陣は社員に出社してほしいと考えるようになった」(湊社長)というギャップもある。社員が行きたくなるようなオフィスに変革するニーズが高まりつつある。ファシリティーはコストから人的資本投資に移行しており「オフィス改装が企業の採用活動に効く」(同)と捉え、幅広く需要を取り込む方針だ。
オフィス空間の需要の変化に対応しようと、同社は多様な形状や色、素材などが特徴の大型テーブル「セントラ」を12月に発売。社内では、デザインハウス内で共同で働く「コワーク」エリアで活用し、形状を生かして個人とグループで使い方を変化させている。
ビジネス環境は常に変化し、「オフィスは一度作ったら終わりではない。働き方やレイアウトは高い頻度で変えていかなければならない」(同)。機動性やアジリティー(機敏性)を重視し、企業ごとに柔軟に対応する必要がありそうだ。