ニュースイッチ

風力発電の主力電源化へ…ユーラスエナジーが整備着々、陸上風力の今

風力発電の主力電源化へ…ユーラスエナジーが整備着々、陸上風力の今

営業運転を開始した北海道・芦川ウインドファーム(北区画)

国内の風力発電をめぐり、陸上で発電容量10万キロワット級ウインドファームが立ち上がり、洋上は着床式の建設が始まった。日本風力発電協会(JWPA、東京都港区、秋吉優代表理事)は2050年の風力発電の国内導入量を1億4000万キロワット、このうち陸上が4000万キロワット、洋上は1億キロワットと試算する。国内風力発電トップのユーラスエナジーホールディングス(HD、東京都港区)は風力発電の主力電源化をにらみ、現在は陸上での拡充を着々と進めている。(いわき・駒橋徐)

23年末時点の国内の風力発電量は陸上の累積導入量で発電容量521万キロワット。東北地方の同211万キロワット、北海道の同68万キロワット、九州の同59万キロワットと3地域が中心だ。

一方、国内発電電力量に占める風力発電は1%程度。30年の陸上風力目標である同1790万キロワットの達成には、陸上における同990万キロワットの未稼働案件が稼働しても、なお同200万キロワットが不足する。JWPAでは保安林解除手続きの長期化や停滞、環境アセスメント手続きの長期化や負担による事業性の悪化や投資中断が生じていると分析するが、将来的に国を支える電源としての期待は大きい。

ユーラスエナジーHDは99年に国内初の陸上ウインドファームを建設。グローバルで事業を展開し、現在は95件、合計発電容量329万キロワットの風力発電を手がける。このうち日本国内で操業中なのは37件、同107万キロワットだ。

再生可能エネルギーで重要な課題である送電網の整備も、北海道の道北地方で独自の送電網の整備を推進。送電網が脆弱(ぜいじゃく)な地での風力発電拡大のため、同社が出資する北海道北部風力送電(北海道稚内市)が、日本初の風力発電専用送電網を構築してきた。

1月には豊富町の芦川ウインドファームの北側地区の営業運転を開始。続いて南側地区も25年4月に運転を始める計画。国内最大の同12万8800キロワットの設備が完成する。同ウインドファームを含めて、6カ所の風力発電所、同43万4500キロワットの電気を同社が整備した送電網で供給する。

運転期間の長い風力発電所のリプレースにも動く。北海道苫前町の海岸高台にある国内初のウインドファーム「苫前ウインドファーム」では20基、同1000キロワットの風力発電所を5基、同4200キロワットに再編した。現在、全国6件のリプレースを進める。

風力発電の拡大に向けて人材育成も重要な課題だ。50年時点で数万人が必要になるとされる。

ユーラスエナジーHDはメンテナンス事業をユーラステクニカルサービス(東京都港区)の社員約130人が全国でメンテを進める。千葉県に構えたトレーニングセンターでメンテ技術を学び、国際風力機関(GWO)の定める基礎安全訓練も受講し、認定を受けることができる。

国内では陸上風力に続き、洋上風力のプロジェクトが一般海域で本格化し、30年度までに計570万キロワットの案件が見込まれる。ユーラスエナジーHDの諏訪部哲也社長は「日本では浮体式がターゲット。英国・スコットランドで進める洋上プロジェクトに出資して浮体式の知見を学び、日本での事業に結び付けていく」とする。

同社は25年4月にテラスエナジー(東京都千代田区)と経営統合する予定。風力と太陽光発電(PV)合わせて、世界で発電容量が433万キロワットとなる。風力、PVで国内トップの再生エネ発電事業者として、バリューチェーンの拡充を進める。

【早くも3刷】次世代型太陽電池の本命がよくわかる新刊「素材技術で産業化に挑む ペロブスカイト太陽電池」(技術監修:宮坂力)好評発売中
日刊工業新聞 2024年12月02日

編集部のおすすめ