脱炭素の“切り札”風力発電、自前で「ドローン点検」広がる
カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)に向けた切り札とされる風力発電で、飛行ロボット(ドローン)による点検が増えてきた。人による点検より精度や時間、安全性などに優れている。海外では最初からノウハウを持つ専門事業者に任せるケースが多いが、国内ではメーカーのメンテナンスや保証に頼るケースが多い。ドローンを使った点検はまだ標準化されていない。メーカーも事業者も点検のあり方を模索している。
国内メーカーの風力発電は一般に2―5年はメーカー保証、それ以降は事業者が保守を行う。
近年、電力会社系は初期からドローンを使い自社点検する例が増えている。東京電力ベンチャーズ(東京都千代田区)は2020年12月に米国の風力発電メンテの大手、スカイスペックスと提携。ユーラスエナジーの発電機170基をはじめ、500基近いドローン点検を実施した。
Jパワーは20年9月にKDDIと組み、点検時間が10分の1に短縮できることを実証し、21年に自社保有の67基の点検を実施。残る200基強もドローンで点検する方針だ。
関西電力は国のグリーンイノベーション基金を活用し今後、増えてくる浮体式洋上風力発電に対し、波で上下する発電機に追従するドローンの開発に乗り出す。
ドローン点検は自律飛行で短時間に大量の写真を撮影し、クラウド上に上げたデータを人工知能(AI)と技術者の両方が判断する。この方法だと過去のデータからどの程度の状態か判断できるほか、地域やメーカーによる故障の傾向なども分かる。
「欧米の洋上風力メーカーは点検は最初からサードパーティーに任せ、強みを生かせる開発に特化する傾向にある」と田中雅文東電ベンチャーズ事業開発部長はいう。独シーメンスや米ゼネラル・エレクトリックの補修パーツはある程度共用できる。
中国ではドローン点検大手のクロボティクスが、欧州の同業3社を買収し、海外市場を強化している。国内ではまだ地上からの目視による点検も少なくない。国内メーカーは保守点検を自社事業として持つべきか、その岐路にいる。