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投資枠2兆円に拡大、豊田通商が脱炭素投資を加速する

投資枠2兆円に拡大、豊田通商が脱炭素投資を加速する

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豊田通商カーボンニュートラル(CN、温室効果ガス排出量実質ゼロ)に向けた投資を加速する。2030年度までの10カ年の投資計画について、進捗(しんちょく)率の高さを踏まえ投資枠を当初比25%増の2兆円に引き上げた。新興国を中心とした再生可能エネルギー領域に同43%増の1兆円を投じるほか、車載用バッテリーなどの資源循環に同25%増の2500億円を振り向ける。商社の幅広い産業接点を生かし、上流開発からリサイクルに至る工程でCNを推し進める。(編集委員・田中明夫)

豊田通商グループが参画する再生エネ事業の発電容量

豊田通商は23年度までの3カ年で再生エネ領域に約4920億円を投じ、当初計画に対する同領域の投資進捗率はすでに実行ベースで7割に達した。22年に国内最大級の再生エネ事業者ユーラスエナジーホールディングス(東京都港区)を完全子会社化したほか、エジプトやサウジアラビアなどで再生エネ発電事業への参画を決めた。

今後は国内や欧州で洋上風力開発を目指すほか、電力需要の拡大を見込む新興国での再生エネ開発に特に注力する。30年度に豊田通商グループが参画する再生エネ事業の発電容量を現状比2倍の1000万キロワット以上に増やす方針で、このうち新興国案件の割合を現在の18%から40%に引き上げる。

インドの再生エネ市場への参入を計画するほか、50年に人口が世界の4分の1に当たる25億人に増える見込みのアフリカで案件を積み増す。今井斗志光副社長は「アフリカ全54カ国で自動車事業を展開するなど新興国に足場を持つことや、フランスのエネルギー大手のトタルやエンジーと緊密な協業関係を持つなど有力なパートナーがいるのが強み」と説明する。

再生エネ電力の有効活用も推進する。オランダでは再生エネ電力を使った水の電気分解によるグリーン水素製造を25年中にも始める。北海道では風力発電や蓄電、送電網が一体となったプロジェクト全体が25年中の完成を予定する。

またCNに貢献するリサイクルにも重点投資する方針。車載用バッテリーではサプライチェーン(供給網)内での資源循環「クローズドループ」に取り組む。正極材に使うリチウムのアルゼンチンでの権益に加え、米国でのバッテリー生産や国内での重要鉱物のリサイクルなどの工程をトヨタ自動車と共同で構築する。

今井副社長は「すでに(自動車の排ガス浄化の)触媒の国内最大級の回収ネットワークを持つなど静脈網を張り巡らせていることも強み」とし、事業基盤を有効活用する。今後は正極材に使うニッケルの生産への参入を検討するほか、使用済みのバッテリーを蓄電所に使うなどクローズドループの高度化を狙う。

大手商社では持ち前の事業ネットワークを生かした脱炭素プロジェクトの開発が活発化している。三井物産はアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ国営石油会社(ADNOC)との長年の協業関係を生かして同国のアンモニア開発事業に参画。三菱商事は米エクソンモービルが計画する米国での水素・アンモニア開発への参画を検討中で、四国電力などと計画中の愛媛県のアンモニア受け入れ拠点への供給を視野に入れる。

日刊工業新聞 2024年10月07日

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