JR常磐線・南武線は25年春から…拡大する「ワンマン運転」、カギ握る技術と課題
鉄道各社で列車のワンマン運転を導入する動きが広がっている。JR東日本は2025年春に常磐線と南武線でワンマン運転を実施する。京王電鉄もワンマン運転を目指し、25年春から井の頭線で自動運転の実証試験を始める。人手不足への対応が主因だ。ただ本格的な導入には自動運転技術の確立や、ホームドアの設置などによる安全性の確保が課題となる。
JR東日本は25年春から常磐線の綾瀬―取手駅間、南武線の川崎―立川駅間でワンマン運転を開始する。さらに26年春からは横浜・根岸線の八王子―大船駅間でもワンマン運転を始める計画だ。30年をめどに山手線や京浜東北・根岸線、中央・総武線、埼京・川越線など、乗降客の多い路線にでもワンマン運転を実施するため、準備を進める。首都圏の主要線区でのワンマン運転実施は初めてとなる。
JR東日本では人手不足などを受け、地方路線を中心にワンマン運転の導入を進めている。現在在来線66線区のうち48線区でワンマン運転をしており、技術開発などの成果を取り入れ、乗降客の多い主要線区に
も広げる。喜勢陽一社長は「ワンマン運転の実施により、1100人分の車掌の仕事が減る」と効果を示す。一方で、「リストラをするわけではなく、創造的な仕事に転換していく」と強調した。主要線区でのワンマン運転導入に備え、運転席に乗降確認モニターを設置するほか、緊急時などに乗客と輸送指令室で通話し、輸送指令室から直接車内放送ができる機能を導入する。車掌がいないワンマン運転では、ホームの安全向上が必須となることから、並行して首都圏在来線のホームドア整備も進める。
ワンマン運転のカギとなるのは、自動運転技術だ。京王電鉄の実証試験は井の頭線の回送列車を利用し、運転士と車掌が乗務したツーマン運転で実施する。運転操作全般を自動化し、均質に運転することで、定時性向上や省エネ効果を検証。また、駅停車時に使用する定位置停止装置(TASC)で停車精度の向上を目指す。井の頭線の自動運転化工事には約48億円を投じ、20年代後半の完成を見込む。京王電鉄は現在、競馬場線と動物園線でワンマン運転を実施しており、拡大を目指して技術検証を進める。
京王電鉄では井の頭線でのワンマン運転の導入と並行して、京王線でもワンマン運転の実施を視野に、自動運転設備とホームドアの整備工事を進める。ホームドア設置には井の頭線で約72億円を投じ、24年度から工事に着手している。さらに京王線についてもホームドア設置に669億円を投じ、30年代前半の完了を目指す。162億円を投じて自動運転化工事も進め、30年代中ごろの完成を目指す。輸送の安全性とサービスレベルを確保しながら、ワンマン運転の拡大を目指している。