JR東日本が「鉄道版」開発着手、生成AIどう使う?
JR東日本は鉄道版の生成人工知能(AI)の開発に着手した。まず生成AIの誤回答を防ぐ「RAG(検索拡張生成)」技術を活用し、鉄道の専門知識に対応したシステムを開発し、2024年度中に試験利用を始める。さらに鉄道設備の設計図や工事計画の生成などを視野に入れ、新たなAIの開発を検討する。業界の人手不足をにらみ、業務効率化に向けて生成AIの活用を加速する。
JR東は23年に企画や総務部門などの業務を効率化するため、米オープンAIの生成AIであるチャットGPTの利用を始めた。ただチャットGPTは鉄道の業界用語や規定などを知らないため、RAG技術で社内文書を読み込み、専門知識を補う。RAGは外部ソースの情報を用いてAIの精度と信頼性を高める技術で、最新の情報や企業独自の情報に基づく回答ができる技術として注目されている。
同社は鉄道独自の業務の効率化を目指し、今後RAG技術による生成AIの利用範囲拡大を検証する。同時に、新たな生成AIの開発を検討する。新たなAIは機能、構成する技術ともに研究中の段階にある。「日本語版の大規模言語モデル(LLM)をベースに、鉄道施設の図面や工事データ、現場映像などで鉄道のことを学習させることを考えている」(西村佳久執行役員イノベーション戦略本部統括)と話す。
このAIを利用し①設計図面の作成②法令との整合性の確認③工事に必要な設備や部材の種類と数量の抽出―などの自動化を視野に入れる。チャットGPTの登場後、関連技術は急速に進化しており「さまざまな新技術をキャッチアップする」(同)という。
鉄道業界の人手不足は地方ほど深刻だ。JR東は「良い技術ができれば、他社にも展開したい」(同)としている。最大手として業界の技術革新をリードし、持続可能な鉄道業界に貢献する考え。
日刊工業新聞 2024年3月12日