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GaNで縦型パワー半導体…シリコン代替、材料から国産化

半導体再興へー大学の最先端研究 #20
GaNで縦型パワー半導体…シリコン代替、材料から国産化

須田教授

半導体は集積回路だけでなく、電力の制御や変換を担うパワー半導体にも一大市場が広がる。「性能の限界を超えるには、シリコンに代わる新材料に挑戦する必要がある」。そう話す名古屋大学の須田淳教授は、窒化ガリウム(GaN)製の縦型パワー半導体を開発中だ。

パワー半導体はシリコンから炭化ケイ素(SiC)やGaNを使った研究に移り、日本が世界をリードしてきた。特にノーベル賞も生んだGaN半導体は、電力損失が少なく、高電圧に耐えるなど優れた特性を持つ。シリコン基板上に形成した横型パワー半導体はすでに製品化され、充電器などに搭載されている。

これに対し、須田教授が取り組む次世代の縦型パワー半導体は、「横型に比べて無駄がなく、窒化ガリウムの実力を100%発揮できる」究極のデバイスだ。シリコン製パワー半導体を置き換え、電気自動車(EV)などへの応用が見込める。GaNの特性から、SiC製パワー半導体より、さらに抵抗を下げられる可能性も見いだした。

GaN製パワー半導体のデバイス断面図

縦型は日本のメーカーが世界トップシェアを持つGaN基板上に形成するため、「材料からデバイスまで国産化が可能」な優位性は大きい。アモノサーマル法などによるGaNウエハーの量産技術が立ち上がりつつあり、レーザーで高速に切断することで、シリコンに挑む際の課題だった高いコストの解決に向けた道筋も見えてきた。

2023年、須田教授は天野浩同大教授、旭化成と共同で、窒化アルミニウム系材料で理想的なpn接合を作り、さらなる新材料の展望も示している。「日本企業が世界で競争力を持ち、産学官の研究者の層も厚いパワー半導体は、国産半導体デバイス産業の“最後の砦(とりで)”ではないか」と須田教授は語る。(おわり。藤木信穂が担当しました)

日刊工業新聞 2024年11月6日

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半導体再興へー大学の最先端研究
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日本の半導体が再興の波に乗り、大学への期待感が強まっている。先端デバイスの研究開発は一時期、大学でも下火となった。だが、半導体分野の教育・研究を通じた人材育成や、最先端技術の開発はこれから大学の大きな使命となる。専門家はどのような未来図を描くのか。注目研究者のテクノロジー展望に迫る。

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