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次世代パワー半導体「GaN」高品質化、豊田合成が製造技術開発

次世代パワー半導体「GaN」高品質化、豊田合成が製造技術開発

美和技術センターにGaN結晶の大型育成炉を導入する(同センターの育成炉)

豊田合成は次世代のパワー半導体とされる窒化ガリウム(GaN)パワー半導体について、高品質な製造技術の開発に着手する。2024年度末にGaN結晶の大型育成炉を増設し、生産能力を現在比で最大10倍程度に拡大。高品質で大口径のGaN基板を安定して製造できる体制を確立する。高効率と高速スイッチングを実現できる同半導体は電動車用モーターやデータセンターなどでの利用が期待されており、同社は脱炭素社会の実現に貢献する。

GaN結晶の育成炉は豊田合成の美和技術センター(愛知県あま市)に1台増設し計2台体制にする。新たな育成炉は一度に複数枚の結晶の育成が可能。これにより量産化を見据えた結晶の品質検証やデバイスの性能検証を加速する。

同社と大阪大学は、ナトリウムとガリウムを混合した金属溶液に高圧で窒素を注入しGaNを合成する「Naフラックス法」を活用し、大型GaN結晶の成長技術の確立に取り組んでいる。現在は6インチ以上の大口径結晶を再現性良く育成し、基板化も開始した。今後は6インチの安定供給や品質向上に向けた改善に取り組むほか、8―10インチへの大型化を目指す。

一方、GaNの実用化はコストが課題になっている。Naフラックス法では大量生産が難しいが、三菱ケミカルと連携し結晶を大量に複製する生産法も検証している。

具体的には、Naフラックス法で製造した種結晶の上にGaN結晶を厚く成長させ、それをスライスして複数枚の基板を生産する。一部は種結晶としても再利用できる。このほど4インチの種結晶上への厚膜再成長に成功した。24年度内に6インチのサンプル供給を目指す。8インチ以上の達成で炭化ケイ素(SiC)パワー半導体とも戦えるコストを実現できるとしている。

GaNパワー半導体はスイッチング速度の速さが強みで、高効率の電力変換デバイスを実現する。第5世代通信(5G)基地局や再生可能エネルギーの整備、サーバー電源など幅広い用途が見込まれ、カーボンニュートラル温室効果ガス排出量実質ゼロ)の実現に貢献できる。豊田合成は早期の社会実装を目指し、国内企業を中心にサプライチェーン(供給網)の確保も並行して進める。


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日刊工業新聞 2024年5月29日

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