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全体の1割をカフェ併設店へ、三井住友銀行の新店舗戦略

三井住友銀行が店舗改革を進めている。銀行とカフェやシェアスペースが一体になった新店舗「Olive LOUNGE(オリーブラウンジ)」を全店の約1割に当たる30―40店舗に増やす方針だ。日常生活の中で気軽に立ち寄って過ごし、銀行サービスも受けられる場所がコンセプトだ。ネット取引の普及により銀行の実店舗は従来の窓口サービスを提供する意義が薄れており、銀行界は店舗戦略が重要課題の一つになっている。(編集委員・川口哲郎)

三井住友銀は7日、東京都世田谷区の下高井戸駅前にオリーブラウンジ下高井戸店をオープンした。オリーブラウンジとしては渋谷店に続く2店舗目。従来の銀行の窓口営業時間は9時から15時が一般的だが、オリーブラウンジは土日祝日を問わず利用できる。

銀行口座、カード決済、融資、証券、保険などの機能をアプリ上で組み合わせた金融サービス「Olive(オリーブ)」の操作方法やポイントの使い方を専門スタッフが案内する。カフェ利用時にオリーブで決済すると10%還元するなどの特典も付く。

オリーブラウンジはオリーブの利用促進もふまえてカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)と共同で店舗開発している。広々としたスペースにCCCの運営するシェアラウンジが入居する。学生の勉強やビジネスパーソンの仕事の場として利用できる。

5月にオープンしたオリーブラウンジ渋谷店は従来の銀行店舗より3・5倍の来店者数がある。オリーブ加入数でも商業施設内の小型店舗「ストア」と比較して1・4倍の実績があるという。

銀行の店舗数は人口減少などを背景に減少傾向にある。全国銀行協会によると、2023年度の全国店舗数は1万3624で、00年度と比較して1割以上減っている。

店舗統廃合の流れの中でも、三井住友銀は「店舗は顧客を迎え、安心感を与える上で非常に大切」(泉純チャネル戦略部長)と捉え、店舗を減らす戦略に走らなかった。現在も全国に約400店舗を維持する。このうちの半数以上を商業施設などに入居するストアに転換する計画で「顧客の生活の中に入っていく」(同)狙いだ。

オリーブラウンジの新規出店は、顧客の来店を増やすストア戦略の延長線上にある。実店舗でもオリーブに関する問い合わせに積極的に対応し、リアルとデジタルの両方の需要を取り込んでいく。

大手銀行では個人の資産形成や運用などの相談に適した店舗へと見直しを進める動きも出ている。みずほ銀行は全店舗の約4割に当たる129店舗をコンサルティングに特化した店舗に移行する。りそな銀行も個別相談に重点を置いた新形態の小型店舗を開設する方針だ。


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日刊工業新聞 2024年10月16日

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