三菱UFJ・三井住友・みずほ…メガバンクがサステナ融資を拡大している
サステナブル(持続可能)目標達成に応じて金利などを優遇するサステナビリティ・リンク・ローン(SLL)で融資を受ける企業が増えている。環境省によると、2022年の国内SLL融資件数は9月26日時点で105件と前年比2倍となり、融資額も3392億円と前年の9割に達した。自社の環境対策を株主に示しつつ運転資金を調達できるSLLの需要増を取り込もうと3メガバンクは目標設定や対策評価支援など関連サービスを相次ぎ強化している。(編集委員・水嶋真人)
SLLでは、まず顧客企業のESG(環境・社会・企業統治)関連のKPI(重要業績評価指標)の中からSLLとひも付ける目標「サステナビリティー・パフォーマンス・ターゲット(SPT)」を選ぶ。
三菱UFJ銀行サステナブルビジネス部の折田直哉調査役は「野心的な目標値を掲げるものでないといけない」と説明する。例えば温室効果ガス(GHG)排出量目標では同業他社よりも踏み込んだ内容としなければならない。日本格付研究所(JCR)、格付投資情報センター(R&I)といった第三者評価機関のお墨付きを得る必要もある。
銀行側はSPTの選定支援のほか、第三者評価機関からの質問状に回答するための準備など、受け付けから契約まで約3カ月かかるSLL契約までの一連の工程を支援する。
三菱UFJ銀行がアレンジャー(主幹事)となり、SCREENホールディングス(HD)と結んだSLL(組成総額100億円)では、23年度にCO2排出量を18年度比10%削減する目標をSPTとした。この達成状況に応じて、優遇金利が適用される仕組み。
東京センチュリーと21年12月に結んだSLL(同580億円)では、環境目標のほか社員の年次有給休暇取得率70%、男性社員の育児休暇取得率100%の維持をSPTとした。「職場環境支援もSPTとなる」(折田調査役)。
こうしたSLL需要増を受け、メガバンク3社は関連サービスを相次ぎ強化している。代表的な事例がサプライチェーン(供給網)全体でのGHG排出量可視化支援だ。
三菱UFJ銀行はゼロボード(東京都港区)のGHG排出量計測、JCRのサステナブルファイナンス評価の知見を掛け合わせ、SLLを中小企業にも提供できるサービスを検討している。
三井住友銀行も米パーセフォニ(アリゾナ州)、日本IBMと連携し、顧客企業のサプライチェーンのGHG排出量を国際規模で可視化するサービスの提供を開始。同行デジタル戦略部の鈴木厚行部長は「排出量算出を広範囲かつ高度化したい企業のニーズに応える」と話す。みずほ銀行も電気やガスの請求書をアップロードするだけでCO2排出量を可視化できるイーダッシュ(東京都千代田区)の脱炭素支援サービス基盤の提供を始めた。
21年の銀行法改正で銀行が経営戦略などのコンサルティング、単独もしくは共同開発したITシステムの提供が可能になった。SLL関連サービスを通じ非金融サービスの強化につなげる。
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