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非上場化で事業改革、ローソン・セブン・ファミマ…コンビニが挑むデジタル化の行方

非上場化で事業改革、ローソン・セブン・ファミマ…コンビニが挑むデジタル化の行方

三菱商事とKDDI、ローソンの3社は2月に資本業務提携の契約を締結した(右から)高橋誠KDDI社長、竹増貞信ローソン社長、中西勝也三菱商事社長

ローソンが三菱商事KDDIによる折半出資体制に移行することに伴い、24日に上場廃止となった。これまで三菱商事傘下で品ぞろえなどを強化して業績は好調だったが、デジタル対応の拡充に向けてKDDIの技術力を取り込む。リモート接客などによる金融・服薬サービスのほか、携帯ショップとの相互利用を促し、顧客基盤を広げる。セブン―イレブン・ジャパンやファミリーマートに続く非上場化となり、コンビニエンスストア業界では短期業績に左右されない事業改革競争が活発化しそうだ。(編集委員・田中明夫、阿部俊介)

遠隔対応で家計相談・服薬指導

三菱商事とKDDI、ローソンの3社は2月に資本業務提携の契約を締結。KDDIがローソンへのTOB(株式公開買い付け)などを通じ、出資比率を2・1%から50%に引き上げ、50・1%保有する三菱商事と50%ずつ出資する体制に移行することに合意した。4月にTOBが終了し、さらにローソンの7月の臨時株主総会で、非上場化に向けた株式併合や定款変更などの議案が可決され、24日の上場廃止が決まった。

三菱商事はこれまで商品開発のほか、人工知能(AI)を活用した需要予測や在庫最適化などでローソンを支援。人流回復の追い風もあって、ローソンの2024年2月期連結決算の当期利益は10年ぶりに過去最高を更新するなど、業績向上を後押ししてきた。

一方、国内市場は少子高齢化や情報技術の進化を背景に消費行動が変容するなど、コンビニを取り巻く環境は大きな転換期を迎えている。「ローソンの拠点に、KDDIの強固な顧客基盤やテクノロジーを掛け合わせて新たなサービスを提供し、さらなる価値提供にチャレンジする」(三菱商事の中西勝也社長)とし、KDDIとの異業種連携でローソンを共同経営することを決めた。

ローソンは専門スタッフの遠隔対応などによる家計相談や服薬指導のサービスの導入を検討する

今後はKDDIの通信技術を活用してローソンのサービスを拡充する。店舗では、専門スタッフの遠隔対応などによる家計相談や服薬指導のサービスのほか、スマートフォン利用の相談窓口の導入を検討。KDDIのデジタル変革(DX)の知見を生かし、店舗運営の最適化も狙う。

ローソンの約1万4600店舗に訪れる1日当たり約1000万人の購買データに加え、KDDIが持つ約2200の携帯ショップや約3100万人の利用者データなどを有効活用する。消費者の嗜好(しこう)に合わせた商品・サービスの開発のほかポイント経済圏の拡大などを通じ、異なる顧客基盤を連携させて相互利用を推進する。

コンビニ業界ではすでに店舗数最大のセブン―イレブン・ジャパンが05年に、2位のファミリーマートが20年にそれぞれ非上場化。今回、業界3位のローソンも非上場化し、中長期的な観点からの事業改革を強化する。

ローソン運営では将来的に電気自動車(EV)の充電や飛行ロボット(ドローン)を使った配送、防災などの地域拠点へと店舗を発展させる構想もある。小売り業界では異例の商社と通信大手のタッグが“未来のコンビニ”作りに挑む。

ファミマ 電子看板、メディア戦略

ファミリーマートは店舗と、デジタルサイネージ(電子看板)や決済機能付きアプリケーション「ファミペイ」などを連携させた取り組みに力を注いでいる。アプリを介して店舗以外でも顧客とつながり続けることで、顧客に寄り添った商品やサービスの提供が可能になる。

ファミリーマート店舗に設置されたデジタルサイネージ

この取り組みはリテールメディア戦略の一環で、同社は「コンビニのメディア化」を進めている。店舗での接客などに加え、レジ上に設置されたサイネージやアプリで顧客の行動変化や購買を促す。

同社の細見研介社長が都内で開いたデジタル戦略説明会で強調したのが「ファミペイのオープンプラットフォーム化」だ。具体的にはパートナー企業がアプリ内に専用ページを開設し、独自の販促プログラムの効果を測定しながら展開。蓄積したデータに基づきブランドや商品を訴求することができる。

同社は電子看板の設置拡大に加え、来春にはファミペイのリアルカードの発行が予定されており、ガソリンスタンドや鉄道改札などで利用できる。細見社長はこれらの取り組みを「筋トレ大作戦」と称し、サイネージやファミペイ、金融サービス、デジタル広告で構成するプラットフォーム全体をパンプアップ(拡大)していく方針を示した。

セブン―イレブン 小型店舗、スマホで会計

一方、セブン―イレブン・ジャパンはアプリと店舗を使った新しい取り組みとして「コンパクト店舗」を展開しており、4月には5店目を出店した。コンパクト店舗は工場やオフィス、マンション、寮などさまざまな場所に出店できる省人化店舗。顧客が自身のスマートフォンから決済アプリ「セブンスマホレジ」を使って会計ができるため、レジ待ちが発生しないのが特徴となる。

セブンーイレブンのコンパクト店舗。品揃えは豊富で奥にはコーヒーマシンが置かれている

企業の福利厚生型の売店としてフランチャイズ展開している。店は最小で50平方メートルと大きくないが、通常店舗と同様に多種多様な商品に加え、セブンカフェやセブン銀行の現金自動預払機(ATM)を設置でき、施設の付加価値向上にもつながる。社員食堂、社内販売、オフィスカフェに代わる新たなサービスとして利用者に支持されており、4月から本格展開を始めている。

人手不足、ロボが代替

日本フランチャイズチェーン協会によると、コンビニの合計売上高は23年が11兆6593億円と2年連続で過去最高を更新した。一方、店舗数は17年以降5万5000店台と頭打ちの状態だ。

コンビニの店舗数と売上高

こうした中、取り巻く事業環境は人手不足に加え、電力費の高騰や円安による原料高でコスト上昇圧力にさらされている。DXによる業務の効率化は書かせず、いかに商品・サービスの付加価値を高めつつ、競争力強化につなげるかが各社共通の課題となる。

富士経済は、不足する労働力市場から各市場のロボット潜在需要を予測した。コンビニは30年に22年比5・3倍に拡大すると推測した。具体的には商品補充や清掃などの業務でロボットの置き換えニーズが増えると期待されている。また、さまざまな業界で活用が進む生成AIについては小売りの利用シーンとして接客自動化や需要予測の高度化、マニュアル作成の効率化などとみている。

日刊工業新聞 2024年7月24日

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