大日本印刷がコンビニで実証、顔認証で「手ぶらで買い物」
大日本印刷(DNP)は東京都新宿区の本社ビル内にあるコンビニエンスストアで顔認証決済サービスの実証実験を始めた。社員は専用のアプリケーションで事前に顔写真を撮影・登録すると手ぶらで買い物ができる。11月末までの約3カ月間で顔写真登録作業を中断した事例や顔認証の正確性、利用者の心理的障壁といったデータを収集し、サービス開発に生かす。将来は人手不足に悩む小売店などの省人化で活用してもらうことを目指す。
実証実験では社員証決済と連動したシステムを活用する。会計時に、レジの横に設置した顔認証対応のカメラ端末に利用者が顔をかざすと、事前に登録した顔写真や社員証情報と照合して決済。パスワード入力などの動作は不要で、買い物の利便性が上がる。
DNPは従来も金融機関向けに、銀行口座開設時などにオンライン上で本人確認を完結する「eKYC」を提供してきた。本人確認アプリの作成やデータ収集、目視による審査業務のBPO(業務受託)などに対応。こうした知見を今回の実証実験にも生かす。
eKYCと組み合わせ、年齢を含めた本人確認ができる顔認証決済サービスの検討も進めている。酒やたばこなど年齢確認を要する商品の販売時にもセルフレジや無人店舗を活用可能になる。eKYCを含む顔認証関連事業の売り上げ規模は2023年度に前年度比50%増を目指す。
DNPはジェーシービー(JCB)などと共同で21年12月に、生体認証を活用した業界横断型の基盤「顔認証マルチチャネルプラットフォーム」の実現に向けた共同事業体を設立。小売業など30―40社が参加する。当事者の同意のもとで登録した顔写真を共通サーバーに蓄積して活用し、生活者が迅速にサービスを利用できる環境の構築を図っている。
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日刊工業新聞 2023年09月07日