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三菱商事・丸紅…大手商社が小売りテコ入れ、それぞれの狙い

三菱商事・丸紅…大手商社が小売りテコ入れ、それぞれの狙い

三菱商事はKDDIとローソンを共同経営する(右から高橋誠KDDI社長、竹増貞信ローソン社長、中西勝也三菱商事社長)

DX推進・非食品と協業、消費者ニーズ多様化に対応

大手商社が小売り流通分野を強化している。三菱商事は子会社ローソンをKDDIとの共同経営に移行し、通信技術を活用した運営でテコ入れを図る。丸紅はイオンとの食品流通を中心とした提携を拡充し、同社傘下のドラッグストアとの美容・ヘルスケアにおける協業で新規顧客の取り込みを狙う。デジタル変革(DX)や流通網の開拓により、多様化する消費者ニーズに対応する動きが活発化している。(編集委員・田中明夫)

三菱商事は50・1%の株式を持つローソンについて、KDDIが4月にも開始するTOB(株式公開買い付け)に応募し折半出資体制に移行する。KDDIのローソン持ち分は2・1%から50%に引き上がる予定。

ローソンの1日当たり1000万人の来店者とKDDIの約3100万人の顧客との接点を融合し、顧客基盤を拡充する。ローソンの店頭ではオンラインで家計相談や服薬指導を受けられる体制を作る。

三菱商事はローソンで品揃えの強化や人工知能(AI)を使った需要予測による業務効率化を推進し、ローソンは2023年度当期利益が過去最高を見込めるまでに成長した。一方、デジタル化や消費者ニーズの多様化など事業環境は急速に変化している。「三菱商事だけではローソンの価値向上に限界がある中、リアルとデジタルを掛け合わせることで新しいコンビニエンスストアを作っていける」(三菱商事の中西勝也社長)とし、生活に欠かせない拠点としての利便性向上を図る。

丸紅は13年にダイエー株をイオンに売却する際に同社と連携協定を締結し、食品流通などで協力してきた。今回はイオン店舗での再生可能エネルギー導入のほか、デジタル技術による無人店舗運営の検討などへと提携を拡充する。

さらに丸紅は、化粧品会社への出資などを通じ次世代の消費者の取り込みを強化している美容・ヘルスケア分野でも、ウエルシアホールディングスなどを傘下に持つイオンと連携する。両社は「事業基盤を活用した新たな価値創造を行う」とし、協業を発展させる。

住友商事はドラッグストアの訪問介護サービスを拡充する

大手商社の小売り流通では市場開拓の動きが広がっている。伊藤忠商事傘下のファミリーマートはコッペパンや衣料品などオリジナル商品が好調で、デジタル技術を活用したファッションショーも開いて新規顧客の獲得を図る。住友商事が運営するドラッグストア「トモズ」は、訪問看護ステーションにITを利用した業務支援を展開するeWeLL(イーウェル)と連携して高齢者向け在宅ケア事業を強化する。

デジタル化の進展と多様な消費者ニーズは産業界に広く商機をもたらしている。商社は広範な産業ネットワークや事業創出力を生かして顧客開拓を加速できるかが競争のカギとなりそうだ。

日刊工業新聞 2024年03月08日

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