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工具・ワーク搬送自動化…工作機械メーカーがロボット領域に力注ぐ

工具・ワーク搬送自動化…工作機械メーカーがロボット領域に力注ぐ

工作機械内にワークを設置するヤマザキマザックの「イージーローダー30」

工作機械メーカーがロボットによる自動化対応に注力している。モノづくり現場の人手不足は、加工対象物(ワーク)を搬送したり、工作機械に設置したりする作業の自動化ニーズを高める。その流れを捉えるべく、従来はロボットシステムインテグレーター(SI)が担っていた工作機械周りのロボットシステムの構築を、工作機械メーカーが自ら手がける事例が目立ってきた。事業領域の範囲がロボット分野にまで広がりつつある工作機械業界の動きを追った。(編集委員・江刈内雅史)

愛知県国際展示場(愛知県常滑市)で開かれた展示会「ロボットテクノロジージャパン2024」(ニュースダイジェスト社主催、愛知県機械工具商業協同組合共催)。DMG森精機は自社製品の自律走行ロボット(AMR)「WH―AMR10」で、工作機械の工具管理を自動化するデモンストレーションを実施し、来場者の目を引いた。

工具をツールプリセッター(工具測定機)で測定した後、工作機械まで自動搬送する。カメラで停止位置の誤差を補正する技術を持つこのAMRの停止精度はプラスマイナス1ミリメートル。精密な位置決めによって工具搬送を実現する。同社のグループ会社であるWALCの桜井努社長は「これまで工具管理は自動化できていなかった」と説明する。高機能のAMRで新たな自動化ニーズの掘り起こしを図っている。

牧野フライス製作所も同社独自のロボット「アイ・アシスト」による自動化システムを展示し、自律走行ができる同ロボットを用いて工具やワークの交換を披露した。また操作やプログラミングについて、「誰でも簡単にできることを実感できる」(営業本部営業企画部)ように体験コーナーを設けた。汎用性が高く、工作機械周辺以外の作業にも用いられ「倉庫から物を運ぶのに使うお客さまもいる」(同)という。

ヤマザキマザックがブースの目玉に据えたのは協働ロボット「イージーローダー」シリーズの最新型である「同30」。工作機械との接続が容易で、操作に必要なデータは接続した工作機械から取得する。工作機械利用者のロボット導入の敷居を下げたこのロボットは「多品種少量に生産形態がシフトしている」(人事・労務部)現場の実情に合わせて移設をしやすくし、生産ラインの変更に対する柔軟性を持たせた。

特に展示した同30は従来機に比べ可搬重量を高め、鉄系などの重量物にも対応する。より多様な加工に適しており、山崎真嗣取締役常務執行役員は「今後は売れ筋になる」とみて、営業活動に力を入れる。

来場者の注目を集めるオークマの「OMR20」

オークマも移動式協働ロボットの新製品「OMR20」と5軸マシニングセンター(MC)との組み合わせをブース前面に展示した。OMR20の新たなワークの登録は、ガイドに従い情報を入力するだけで済む。ワーク情報は最大30種、使用する工作機械は10台まで登録でき、多品種少量生産をサポートする。複雑形状の加工ができ、複数の工程を集約可能な5軸機に設置することで、多品種少量生産への適応力がさらに高まる。家城淳社長は「いろいろな機械で使えるのがポイント。人手不足に悩む中小企業に広めていきたい」と意気込む。

ブラザー工業も三和ロボティクス(長野県飯田市)と協業し、5軸MCとロボットの組み合わせで、多品種少量生産を行う中小の自動化ニーズの取り込みを進めている。ブラザー製の小型MC「スピーディオU500Xd1」専用として、三和ロボティクスが開発したシステム「NEXSRT」をアピールしていた。同システムはMCのテーブルに取り付けてワークをセットする治具「バイス」をロボットで着脱する。

ワークをバイスごと取り換えることで、自動化を実現。例えば加工時間が30分のバイスを16個置いておけば、8時間の無人運転が可能になる。「『夜間だけ自動化をしたい』といった中小企業の要望に対して簡単に使える」(ブラザー工業産業機器営業部)システムとして売り込む。

慢性的な人手不足に悩む現場において、自動化への希求は高まる一方だ。工作機械メーカーは自ら開発・販売したり、ロボット関連企業と手を組んだりして、自社製品に連動するロボットシステムを生み出し、自動化ニーズを工作機械需要の掘り起こしに結びつけている。


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日刊工業新聞 2024年7月17日

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