固定電話から移行過程案、NTTが示す4つの選択肢
NTTは2035年度の完了を見込むメタル設備を用いた固定電話から代替サービスへの移行過程案を示した。25年度から移行を段階的に開始。利用者の引っ越し、メタル設備が故障した地域などから移行を勧奨し、エリア単位や計画的な移行も順次実施するとした。ただ、円滑な移行には代替サービスの早期確定が不可欠。NTTが示す四つの代替サービス案の中から、利用者目線に立ちつつ持続可能で効率的な案をしっかりと選ぶことが求められる。(編集委員・水嶋真人)
「短期間で急速に移行するのではなく、移転などの申し込みを契機とした移行を提案しながら面的な移行を段階的に実施する」―。NTTの服部明利執行役員経営企画部門長は27日に開かれた情報通信審議会(総務相の諮問機関)の作業部会で移行過程案の基本的な考え方を示した。
同案では、代替サービスの未提供地域へのエリア展開を27年度から段階的に開始し、35年度に完了する。年約7%減少している加入電話の契約数の推移を考慮し、30年度の固定電話契約数は23年度比約400万減の730万回線に減るとした。このうち、200万回線が代替サービスに移行していると予測。代替サービスに移行が完了した35年度の契約数は500万回線、45年度には230万回線とみている。
NTTは、これらの予測を基に四つの代替サービス案の収支を作成した。35年度に電話を全てNTT東西の光回線電話で提供した場合は年770億円の赤字が発生すると予想。携帯通信を用いたモバイル網固定電話と光回線電話・ワイヤレス固定電話の提供をともに保障した場合の年間赤字額は320億円、モバイル網固定電話と光回線電話のいずれかを保障する方式は同30億円、モバイル網固定電話のみで提供する場合は同60億円との試算を示していた。
いずれの方式も地域固定電話番号「0ABJ」による固定電話が利用できる。服部NTT執行役員はモバイル網固定電話の活用で赤字額を大幅に抑えられるとして「モバイル網固定電話もユニバーサル(全国一律)サービスの対象となるよう品質基準の緩和検討が必要だ」と主張した。
NTTによると、契約数の減少による設備維持コスト効率の悪化で、メタル固定電話の赤字額は22年度の300億円から35年度には900億円に達する見通し。23―35年度の累計赤字額は6000億円規模になる見込みだけに、代替サービスの早期確定がコスト効率の向上に寄与する。
これに対し、KDDIは「NTTの移行過程案には、政府のデジタル田園都市国家構想で示す27年度までに光ファイバーの世帯カバー率99・9%を目指す目標を踏まえていない」と指摘。ブロードバンドのオプションで提供される光IP電話の需要予測を含めた案の作成を求めた。