ニュースイッチ

難題「固定電話維持コスト」どうする…NTT東西、ワイヤレスで提供開始

難題「固定電話維持コスト」どうする…NTT東西、ワイヤレスで提供開始

箱型のターミナルアダプターをコンセントと電話機に接続することでワイヤレス固定電話を利用できる

NTT東日本とNTT西日本が携帯電話網を用いた無線による固定電話「ワイヤレス固定電話」の提供を1日に始める。NTT東西はNTT法などに基づき、どの世帯でも公平に安定して利用できるユニバーサル(全国一律)サービスとして固定電話を提供している。だが、メタル設備による固定電話事業は毎年数百億円規模の赤字が続く。固定電話の全国一律サービスを続けるためにも、現在は山村や離島に限られるワイヤレス固定電話の提供エリア拡大が望まれる。(編集委員・水嶋真人)

「より多くの方が利用するようにならないとコストが低減していかない。極めて限定的な利用にとどまる制限を見直し、経済性のある地域で利用を広げていくべきだ」―。成城大学の岡田羊祐教授は、3月27日に開かれたNTT法見直しを議論する情報通信審議会(総務相の諮問機関)の作業部会で、ワイヤレス固定電話の提供エリア拡大に理解を示した。

現在認められている提供エリアは、山村や半島、離島振興法の対象地域で1平方キロメートル当たりの加入電話回線が18回線未満の地域。これ以外で特別な事情によりメタル設備での提供が著しく不経済なエリア、災害などで一時的にNTT東西自らが設置する設備による電話の提供が難しいエリアも対象となる。NTT東では17都道県の約1万3000区域にある約20万回線、NTT西は30府県の約1万区域にある約30万回線が該当する。

ただ、NTT東の井上暁彦営業企画部門長は、該当区域には光回線を用いた「ひかり電話」で電話サービスを提供可能な地域が含まれていると説明。

「向こう10年間のワイヤレス固定電話の回線数はNTT東西の合計で15万回線程度となるだろう」と現時点での見通しを示す。

一方で、井上部門長は契約減が続く固定電話の厳しい事業環境を指摘する。NTT東西の固定電話契約数(加入電話とINSネットの合計)は2023年12月末時点で前年同月末比8・2%減の1272万件と、直近10年間で半減。メタル設備を用いた固定電話事業の22年度の赤字額は約300億円となった。

NTTは老朽化で35年にもメタル設備を縮退せざるを得ないとの見通しを示す。メタルケーブルの再敷設には多大な費用がかかる。それだけに、顧客にできる限り負担をかけずに固定電話サービスを維持できるワイヤレス固定電話の提供地域拡大が3月27日の作業部会で議論され、多くの構成員の賛同を得た。

ワイヤレス固定電話は21年度に実施した公募に唯一応募したNTTドコモの携帯通信網を活用する。月額料金は住宅用で1760円(消費税込み)からと通常の固定電話と同額だ。国内の固定電話にかけた場合の通話料金は全国一律で3分当たり8・8円(同)と、ひかり電話と変わらない。地域固定電話番号「0ABJ」による緊急通報やファクスにも対応している。

提供エリア拡大が認められれば、山村だけでなく、配管など構造の問題で光回線の導入が困難な都市部の雑居ビルなどでの利用も見込む。

日刊工業新聞 2024年04月01日

編集部のおすすめ