1時間の出荷量3倍、アイリスオーヤマが工場物流改革で得た成果
アイリスオーヤマ(仙台市青葉区、大山晃弘社長)は物流効率化に向けて、工場内に「ケースコンベアシステム」の導入を進めている。自動倉庫から荷物をトラックまで運ぶ配送効率を改善。トラックの待機時間を減らし、導入前に比べて1時間当たりの出荷量を約2―3倍に引き上げている。2021年に先行導入した大河原工場(宮城県大河原町)を皮切りに、現在4工場で運用する。24年度は埼玉工場(埼玉県深谷市)と三田工場(兵庫県三田市)への導入を計画する。(編集委員・大矢修一)
ケースコンベアシステムは、工場の自動倉庫から取り出したアイリスオーヤマが扱う生活用品などの商品をコンベヤーに載せ、荷物の判別を経て搭載するトラックまで自動で運ぶ仕組み。トラック運転手の残業上限規制に伴う「物流の2024年問題」に向けた対策の一環だ。コロナ禍における巣ごもり需要で工場からの出荷が増えていた背景もあって、21年11月に本社から近い大河原工場で試験運用を始めた。
同工場をモデル工場とし、各工場の特性も踏まえたケースコンベアシステムの導入に向けた知見を蓄積。同工場に続き、22年11月につくば工場(茨城県阿見町)、23年5月に鳥栖工場(佐賀県鳥栖市)、23年11月に米原工場(滋賀県米原市)で運用を始めた。現状では導入した工場全体で、導入前に比べ出荷量が1時間当たり2―3倍に高まる効果を確認できた。
モデル工場の大河原工場では、商品の流れる動線を自動倉庫の上部に据え付ける工夫などを凝らし、トラックまで運ぶルートを自前で構築。従来の自動倉庫から取り出した商品を作業者がローリフトなどに積んでトラックまで運ぶ時間を削減できる環境を整えた。矢沢裕幸物流部大河原物流兼卸町物流リーダーは「工場ごとでケースコンベアシステムの構築の仕方が違う」と説明する。モデル工場でのシステム構築の試行錯誤が次への導入に生かされている。
センサーや仕分け装置など市販の部材を調達し、内製でシステムを構築できる点がアイリスオーヤマの強みでもある。全体を見る副島昌和執行役員製造・物流部統括 統括工場長は「アイリスのロジックに合わせ自社で設計、構築することでほかにない強い仕組みが構築できた」としている。
同システムの立ち上げに向けた社内部門の連携は、物流と製造の企画部署が中心となり、各工場の技術者とともに取り組んでいる。改善点の確認などを日々行い、配送業者との打ち合わせも実施している。今後の導入先として、5月には埼玉工場、9月に三田工場をそれぞれ予定。25年完成予定の岡山瀬戸内工場(岡山県瀬戸内市)には当初からの導入を見込む。