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JFE商事、日鉄物産…鉄鋼系商社が欧米に照準、電磁鋼板・xEV向け強化

JFE商事、日鉄物産…鉄鋼系商社が欧米に照準、電磁鋼板・xEV向け強化

JFE商事がセルビアに建設する電磁鋼板加工の新工場(イメージ)

鉄鋼系商社が欧州や北米に電磁鋼板の加工・販売体制を相次ぎ整備する。JFE商事はセルビア、日鉄物産はメキシコでそれぞれ電磁鋼板を電気自動車(EV)など電動車用モーターの中核部品「モーターコア」向けに加工する工場を新設し、2025年に稼働する。電磁鋼板に関わる技術は日本の鉄鋼勢が優位性を持つ。脱炭素化の流れが加速する中、電動車(xEV)の普及が見込める欧米市場で需要を取り込み、海外事業を拡大する。(下氏香菜子)

「最新技術を備えた新工場はセルビアと欧州の自動車、電機、電子産業に確実に貢献すると信じている」。3月中旬、セルビアで新工場の起工式に参加したJFE商事の小林良嗣副社長は、同国のヴチッチ大統領らを前にこう意気込んだ。

JFE商事は約80億円を投じ、セルビアに同社として欧州初となる電磁鋼板の加工工場を新設する。新工場にはプレス加工機や連続焼鈍炉を導入。電磁鋼板を電動車用モーターコア向けに加工し、現地の完成車メーカーなどに供給する。25年7月の本格稼働を目指す。同社は世界で電磁鋼板の加工・流通網を広げており、従来の日本、米州、中国、東南アジアの4極に新たに欧州が加わる形となる。

一方、日鉄物産は中長期でxEV市場の安定成長が見込める北米市場に照準を合わせる。メキシコ・グアナファト州に電磁鋼板を専門に加工するコイルセンターを新設し、25年4月に稼働する計画だ。電磁鋼板に特化した拠点は同社として初めて。同センターは建屋建設の段階に入り、1月下旬には建設着手に合わせて立柱式と呼ぶイベントを現地で開いた。

同センターには大型スリットラインを4基導入する。電磁鋼板のスリット加工と品質検査を行い、電動車のモーターコアを製造するプレス加工会社や完成車メーカーに供給する。年産能力は12万トンを予定。日本製鉄との一体運営を強みに他社との差別化を図り、現地顧客のニーズに応える。

カーボンニュートラル温室効果ガス〈GHG〉排出量実質ゼロ)の達成に向け、世界でxEVの投入が相次ぐ。国際エネルギー機関(IEA)によると、24年のEVとプラグインハイブリッド車(PHV)の世界新車販売は、前年比2割増の約1700万台に拡大する見通し。欧米では環境規制の強化やEV生産を優遇する産業政策などを背景に、完成車や部品各社が現地での生産体制を拡充。xEV用モーターに欠かせない電磁鋼板の需要も拡大する見通しだ。

日本の鉄鋼大手は足元で“量から質”へのビジネスの転換を進めており、高付加価値品の代表品種である電磁鋼板の供給網拡大を重視している。鉄鋼系商社は欧米でxEV向け電磁鋼板の加工・販売体制を強化し、同分野で存在感を一層強めていきたい考えだ。

日刊工業新聞 2024年4月25日

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