世界的な資材高騰が追い風。業績「好調」総合商社の足元に残る課題
世界的な資源価格の高騰を背景に総合商社の業績が好調だ。中国を中心に鉄鋼需要が拡大し、鉄鉱石の価格が上昇。銅の需要も増加しており、鉱山の権益などを持つ商社の業績を押し上げた。自動車販売をはじめ非資源分野も好調だ。ただ、資源高に依存せず稼ぎ続けることが求められており、東南アジアでの新型コロナウイルスの感染再拡大、半導体不足、中国の粗鋼生産抑制など足元には課題も残る。(森下晃行)
住友商事、伊藤忠商事、丸紅の2021年4―6月期の当期利益が四半期ベースでそれぞれ過去最高を更新した。三菱商事の同期の当期利益は1875億円で、過去最高益だった18年4―6月期に次ぐ。三井物産は22年3月期の当期利益見通しを過去最高の6400億円に上方修正するなど、鉄鉱石や銅をはじめとした資源価格の高騰が寄与し、商社の業績が好調だ。
世界銀行(世銀)によると5―7月の鉄鉱石の平均価格はトン当たり200ドル超。上昇傾向は続くものの「価格は年度末にかけて通常化していく」(内田貴和三井物産副社長)との見方がある。銅については脱炭素も追い風だ。電気自動車(EV)のバッテリー材料として世界的に需要が拡大している。
非資源分野の収益も改善した。各社は世界の自動車需要の回復を取り込んだ。三菱商事はタイやインドネシアで自動車販売が伸長、同事業の4―6月期の当期損益は前年同期に比べ500億円増え赤字から黒字転換した。住友商事も自動車リースなどの収益が改善。各社は自動車以外では化学品・食料品、農業資材関連などが好調だった。
値動きが激しい資源への依存を避けるため、伊藤忠商事をはじめ各社は非資源分野に注力してきた。「各国の景気刺激策が鉄鉱石などの資源価格を押し上げており、価格が高止まりしやすい環境」(永野雅幸大和証券シニアアナリスト)ではあるが、高騰がいつまで続くか見通せず、下落に備え非資源で稼ぎ続ける力が各社には求められる。
対応すべき課題も残る。東南アジアでは新型コロナが感染拡大中だ。三菱商事の増一行常務執行役員は「足元の影響はほとんどない」としつつも「東南アジアの自動車販売が良かっただけに、今後どうなるのか見極めたい」と警戒する。
自動車の半導体不足についても、伊藤忠商事の鉢村剛副社長は「ボトルネックがいつ解消されるか」と懸念する。中国は7月末から鉄鋼製品の輸出時にかかる関税を引き上げ、粗鋼生産の抑制に動き始めた。「鉄鉱石価格がどう動くのか見極めが必要」(永野アナリスト)という指摘もあり、予断を許さない。