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大学リカレント、ポストコロナの働き方・学び方改革と連動で本格化

社会人の学び直し(リカレント)が、ポストコロナの働き方・学び方改革と連動して本格化してきた。従来との違いは、多くの人・組織が生成人工知能(AI)の進展などから、「変わり続けなくては」と強く認識している点だ。内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)でも、同テーマが人文・社会科学分野の研究課題として動き出した。状況を概観した後、全国の大学の最新の取り組みを連載する。(編集委員・山本佳世子)

日本社会は従来、伝統的な考え方やコミュニティーの中で緩やかに変化してきた。しかし少子高齢化の歪みが想定以上と判明し、ワーク・ライフ・バランスを踏まえた労働生産性向上やシニア就労が求められている。また新型コロナウイルス感染症を機に、ウェブ会議システムや各種ITツールが、職場の会議でも大学の遠隔講義でも一般化し、環境も大きく変わっている。

企業、個人、大学ともリカレントの必要性を理解するが、保守的な層は複数の不安を持つ。対して政府は大学の教育コンテンツ提供で文部科学省が、企業・人のマインドを変えるための講座認定などで経済産業省が、教育訓練給付金の使い勝手向上で厚生労働省が、連携して後押しする。

大学が用意するコンテンツは夜間や通信教育、専門職大学・大学院などの正規課程が伝統だ。また理工系の特定技術や経営学系のビジネススキルの伝授も、小規模に行われてきた。しかしここへ来てより広範な時代のニーズが押し寄せている。データサイエンスやAI、ITの即戦力スキルも、国際派エグゼクティブ向けのリベラルアーツも。産学連携の仕組みでも多様なものが動いている。

未来社会の課題解決を目指す内閣府のSIP。ここで新設され話題を集める課題が、「ポストコロナ時代の学び方・働き方を実現するプラットフォームの構築」だ。サブ課題は学び方のバーチャル空間の技術開発に加え、教育機関と地域・社会の接続、総合知で社会を変える博士人材の育成などだ。

リカレントはこれまで特殊な活動とみなされていた。しかし今後は、分野を越えたイノベーション創出の人材育成として、日本社会の柱に成長していくのかもしれない。

日刊工業新聞 2024年02月27日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
社会人の学び直し(リカレント)の新連載をスタートしました。大学はどこも「18歳人口減の中、リカレントは上手にできれば収入源として魅力がある」と期待しています。が、受講生個人や派遣企業にとって、費用対効果が適切でその結果、中期的に受講生が集まるプログラムが構築できるか? というと、そう容易ではありません。連載では支社・支局を含めて全国の大学の、様々な取り組み事例を紹介していきます。紙面は火曜の「マネジメント」面です。ご愛読ください。

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