2輪車「多品種少量」、ヤマハ発動機が再構築した生産体制の全容
AGV駆使、超汎用ライン化
ヤマハ発動機は本社工場(静岡県磐田市)の2輪車の組み立てラインを4本のコンベヤー式から、無人搬送車(AGV)を用いた多品種少量生産に対応する2本のラインに刷新した。きっかけはコロナ禍における生産台数の減少だ。輸出先ごとの仕様変更や縮小する国内市場に見合った形に生産体制を再構築し、メード・イン・ジャパンの2輪車を次代につなごうとしている。
本社工場での2輪車の生産台数は2014年以降減少を続けている。コロナ禍の20年には15万台に縮小。その後アウトドアレジャー需要の急拡大で生産台数が反転するものの、今後に向け「15万台の生産にも耐える体質への転換が必要だった」(久保山儀一組立技術部長)。
見直しは21年に始まり、22年には現体制が整った。その間の投資額は約20億円。結果、組み立て工程の人員を3割削減し、2輪車を35モデル生産できる「超汎用ライン化」を実現した。
大量生産を前提としたコンベヤーは生産モデルを切り替えにくい。しかも従来はラインごとに生産できるモデル数が少なく、ロット当たりの最少台数は40台だった。しかも2輪車の部品点数はモデルによって1000―3000個という開きがあり、所要時間や工程も変わる。多品種少量を少ないライン数で柔軟に生産するためにはコンベヤーを変える必要があった。これらの課題を解決するのがAGVだ。
AGVは各モデルで定められた次の工程や「セル」という作業場に自動で向かう。この「バイパス方式」と名付けた仕組みでモデルに合わせてラインを変更できる。この利点を生かし、ロット最少4台で決められたパターンを1時間ごとに繰り返すという生産体制を作り上げた。
現在、工場では自社開発のAGVが135台稼働し、2輪車を載せて連結しラインを形成する。部品を運ぶAGVも、その左右で作業に合わせて進む。AGVは製品の情報が入った無線識別(RFID)タグで管理する。
毎日、ラインアップしている車種の90%のモデルを生産しているため、「以前は月1回だけ生産していたようなモデルの工程を忘れないようになった」(同)という副次的な効果もあった。
ただ人手不足やさらなる国内市場の縮小を見据えるとラインはこれで完成ではない。今後はさらに搬送や荷役作業などの自動化にも取り組む方針だ。(浜松)(随時掲載)