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遅延60%削減…大都市監視カメラ映像を郊外DCでAI即時分析、NTTが新技術

遅延60%削減…大都市監視カメラ映像を郊外DCでAI即時分析、NTTが新技術

低遅延通信技術のAPNはウェブ会議システムでの活用なども見込まれている

APN活用で遅延60%短縮

NTTは米レッドハットや米エヌビディア、富士通と連携し、複数の監視カメラの映像を約100キロメートル離れたデータセンター(DC)でリアルタイム分析する技術を開発した。次世代光通信基盤の構想「IOWN(アイオン)」の低遅延通信やデータ処理高速化手法を活用。大都市にある膨大な数の監視カメラの映像データを土地や電力の調達が容易な郊外のDCに伝送し、人工知能(AI)で分析可能にする。2026年の商用化を目指す。(編集委員・水嶋真人)

実証実験の環境(イメージ)

IOWNの構成要素でネットワークから端末までを光で結ぶNTTの低遅延通信技術「オールフォトニクス・ネットワーク(APN)」を活用した。NTTの横須賀研究開発センタ(神奈川県横須賀市)にある大都市を模した監視カメラ設置拠点の映像データを、APN経由で約100キロメートル離れた武蔵野研究開発センタ(東京都武蔵野市)内の郊外型DCに伝送。同DC内にあるエヌビディアの画像処理半導体(GPU)を使ってリアルタイム分析する実証を行った。

監視カメラ設置拠点で取得した映像データをAPNを通じて郊外型DCのアクセラレーター(データ処理向上装置)のメモリー上に直接転送するオフローディング(機能分散)技術を用いることで遅延時間を最大60%短縮。消費電力も同40%削減できたという。

レッドハットのコンテナ型クラウド基盤「オープンシフト」も利用し、データ処理高速化手法を郊外型DCに柔軟に配置可能にした。

大都市にある監視カメラの映像をAIで分析する場合、カメラ設置拠点でのエッジ(現場)処理では速報性が高い一方、メンテナンス費用が高くなり、AIモデルや機器を頻繁に変えることが困難になる。カメラ設置拠点から数十キロメートル離れた都市型DCで処理する場合は大都市圏内のため、DC建設用地や電力の確保が難しかった。

一方、大都市から数百キロメートル離れた郊外型DCは用地や再生可能エネルギーの確保が容易だが、データ伝送時のネットワーク遅延やシステム負荷の増大が課題だった。IOWNを用いることで、これらの課題の解消が見込まれる。郊外型DCを用いた大都市のスマートシティー(次世代環境都市)化の推進も期待できそうだ。

日刊工業新聞 2024年02月21日

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