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不良品と「ばらつき」の関係性

知っておくべき調達・生産・販売の基礎知識 #7 知っておきたい生産の「ばらつき」

「生産の4M」(Man:人、Machine:設備や治工具、Material:原材料、そしてMethod:作業方法や管理方法)を考えるときに、知っておくべき「ばらつき」の概念について説明します。
 たとえば、ホームセンターで、「長さが500mm(50cm)」の木の丸棒を数本買ったとしましょう。品名には「ひのき丸棒500mm×5mm」などと書かれているはずです。この木の丸棒の長さを正確な定規で測定すると、厳密に500mmになっているとは限りません。500mmのものもあるかもしれませんが、502mmや501mm、あるいは503mmといったように、それぞれに微妙に長さが違うことがわかるでしょう。

このような事例は他にもあります。「小麦粉100g」と書いている小麦粉を買ってきて、実際に精度の高い秤(はかり)で測定すると、厳密に100.0gではなく、たとえば101.2gであったり、100.7gであったりということが起こります。これらはすべて、詐欺ではなく合法的に許容されたもので、不良ではなく、良品として販売されているものですが、その寸法や重量などは、厳密に調べると、多少のばらつきがあるものだと考えてください。
 このように、あらゆる製品の特性には「ばらつき」があり、その特性のばらつきが一定の規格を超えてしまうと不良品になると考えてください。
 たとえば、木の丸棒の規格が「長さが500mm以上、510mm未満」とだったならば、生産された木の丸棒の長さがこの範囲に入っていれば良品、逸脱してしまうと不良品になります。長さが498mmの丸棒であれば規格よりも長さが不足しているので不良品となります。

他の例も示しましょう。ある製品の表面に「汚れが付着」しているとします。そもそも、汚れがゼロ(まったく何も汚れが付着していない)のものは、世の中に存在はしません。どれだけきれいであっても、顕微鏡などで厳密な観察をすると、何らかの汚れが付着しているものです(半導体など精密な製品になると、原子レベルの大きさの汚れや異物ですら問題となります)。そのため、大きな汚れがあれば不良品に、小さな汚れは良品に、といった判断を行います。
 外観を重視したお客様から「汚れがなきこと」という規格を求められたとします。汚れがゼロは実現不可能なので、汚れの「ばらつき」を考えて、どの程度の汚れは許容して良品と判断するか、不良品と判断するか、といった具体的な規格をお客様と協議する必要があります。よくあるのは「目視で見えない汚れは、ないものと考える」です。これは、仮に拡大鏡などで見れば、微小な汚れが付いていたとしても、目視で見えないレベルであれば、汚れは存在しないと判断するのです。目視で検査して汚れが見えなければ良品、目視で検査して汚れが見えれば不良品とします。
 ただし、寸法のように測定器で厳格に測定できるものはわかりやすいですが、目視である・なしを判断する場合は、「私には見える」「私には見えない」といった個人差などがどうしても生じるので、その判断の妥当性について、お客様ともめることもあります。

規格を設定して、規格を逸脱するものを不良品、規格を満足するものを良品とするのが、一般的な考え方です。規格に適合したもの(適合品)は良品であり、規格に不適合なもの(不適合品)は不良品になります。

<書籍紹介>
書名:まんがでわかるサプライチェーン 知っておくべき調達・生産・販売の流れ
著者名:古谷賢一 著/日豆思惟子 作画
判型:A5判
総頁数:192頁
税込み価格:2,200円

<販売サイト>
Amazon
Rakuten ブックス
Nikkan BookStore

<著者略歴>
〇著者
古谷 賢一(ふるたに けんいち)
株式会社ジェムコ日本経営 プリンシパル本部 本部長コンサルタント
大阪産業大学経営学部商学科非常勤講師
【資格】公益社団法人全日本能率連盟認定マスター・マネジメント・コンサルタント、ICMCI(国際公認経営コンサルティング協議会)認定コンサルタント、MBA(経営学修士)
【略歴】大手鉄鋼メーカーにて、主に電子回路モジュールおよびコンピュータなど情報機器の開発製造事業に従事。開発・設計・製造・生産技術・品質保証・品質管理等の業務に従事し、本社より分社した事業会社の品質保証責任者、生産技術部門長および海外生産子会社(フィリピン、中国)の品質管理責任者を歴任。生産子会社・協力工場や、部材ベンダー・取引先へのものづくり指導、生産技術指導、品質指導を、国内外問わず多く手がけている。
その後、ジェムコ日本経営に入社。経営管理、人材育成から、品質改善支援、ものづくり革新支援など幅広い分野に従事し、"地に足がついた活動"をモットーに、現場に密着し、きめ細かい実践指導は顧客から高い評価を得ている。
タイ、マレーシア、フィリピン、ベトナムおよびハンガリーなど、海外での支援実績も多数あり。
【著書】『工場長の教科書』『在庫戦略の教科書』(共に日経BP)。雑誌『工場管理』(日刊工業新聞社)にて「Z世代の新人育成バイブル」を連載。『工場管理』『型技術』(同)にて寄稿多数。
【専門分野】経営管理・経営戦略、ものづくり現場改革・生産合理化、品質管理・品質改善、組織・人材開発
〇作画
日豆 思惟子(ひず しいこ)
九州在住のデザイン系フリーランス。心地よく感じられる作画を目指す。
ウェブサイト:https://honeysuckle-nagasaki.tumblr.com/

<目次>
第1章 サプライチェーンを知ろう
第2章 顧客から納期の前倒し要望
第3章 急な増産対応の依頼
第4章 値下げ要請に直面する
第5章 品質クレームにどう対応するのか

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知っておくべき調達・生産・販売の基礎知識
知っておくべき調達・生産・販売の基礎知識
製造業における「サプライチェーン」は「原材料を調達して、生産活動を行い、そして、顧客の手元に製品をお届けするまでの一連の流れ」を指します。この流れを止めないよう、企業は部門を越えて情報を共有し、最適な取り組みを行っています。
 こうした中で、営業担当者は顧客からのさまざまな変更要請を受ける窓口です。顧客の要請に満足に応えるために、営業担当者は自社のサプライチェーンを把握しておかなければなりません。これがスキルとなって、顧客の信頼を得る基本になるのです。

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