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業種ごとに考える「費用」と「原価」

知っておくべき調達・生産・販売の基礎知識 #5 費用と原価

厳密に言うと、「費用」の定義は、企業の損益計算書において、支出として扱われるものです。この費用には、生産活動をするのにかかったお金だけではなく、営業や総務などの企業活動のあらゆる面でかかったお金のすべてを含みます。そのため、「費用」は「原価」よりも広い意味を持っており、この場合の費用は英語で Expenses (支出や経費といった意味を含みます)と訳されます。なお、「売上」から、この「費用」を引いたものが企業の「利益」になるという関係にあります。したがって、製品を生産してお客様に販売するまでにかかったお金は、「原価」でもあり「費用」でもあると言えます。

企業は、生産活動をするのにかかったお金だけではなく、営業や総務などの企業活動のあらゆる場面で、お金を支払っています。これらも企業にとってはすべて「費用」となります。たとえば、営業活動に従事する従業員の人件費や広告宣伝費など(これらを「販売費」と呼びます)、あるいは経理や総務など間接業務にかかわる従業員の人件費、本社ビルの維持費用、研究開発費など(これらを「一般管理費」と呼びます)は、間接的には製品の生産や販売に寄与しているかもしれませんが、直接的に製品の生産や販売とはつながっていません。これらの費用は「販管費(販売費及び一般管理費)」と呼ばれ、「製造原価」には含まれません。ただし、「総原価」には含まれます。

ちなみに「売上原価」という言葉もありますが、これは製造業において「製品」と「商品」の違いに関係していて、「製品」を生産するのにかかった「製造原価」と、「商品」を仕入れるのにかかった「仕入原価」を合算したものが「売上原価」になります。小売業や流通業などでは、主に他社から商品を仕入れて自社で販売をするので、この「売上原価」という言葉を使うのが一般的です。

<書籍紹介>
書名:まんがでわかるサプライチェーン 知っておくべき調達・生産・販売の流れ
著者名:古谷賢一 著/日豆思惟子 作画
判型:A5判
総頁数:192頁
税込み価格:2,200円

<販売サイト>
Amazon
Rakuten ブックス
Nikkan BookStore

<著者略歴>
〇著者
古谷 賢一(ふるたに けんいち)
株式会社ジェムコ日本経営 プリンシパル本部 本部長コンサルタント
大阪産業大学経営学部商学科非常勤講師
【資格】公益社団法人全日本能率連盟認定マスター・マネジメント・コンサルタント、ICMCI(国際公認経営コンサルティング協議会)認定コンサルタント、MBA(経営学修士)
【略歴】大手鉄鋼メーカーにて、主に電子回路モジュールおよびコンピュータなど情報機器の開発製造事業に従事。開発・設計・製造・生産技術・品質保証・品質管理等の業務に従事し、本社より分社した事業会社の品質保証責任者、生産技術部門長および海外生産子会社(フィリピン、中国)の品質管理責任者を歴任。生産子会社・協力工場や、部材ベンダー・取引先へのものづくり指導、生産技術指導、品質指導を、国内外問わず多く手がけている。
その後、ジェムコ日本経営に入社。経営管理、人材育成から、品質改善支援、ものづくり革新支援など幅広い分野に従事し、"地に足がついた活動"をモットーに、現場に密着し、きめ細かい実践指導は顧客から高い評価を得ている。
タイ、マレーシア、フィリピン、ベトナムおよびハンガリーなど、海外での支援実績も多数あり。
【著書】『工場長の教科書』『在庫戦略の教科書』(共に日経BP)。雑誌『工場管理』(日刊工業新聞社)にて「Z世代の新人育成バイブル」を連載。『工場管理』『型技術』(同)にて寄稿多数。
【専門分野】経営管理・経営戦略、ものづくり現場改革・生産合理化、品質管理・品質改善、組織・人材開発
〇作画
日豆 思惟子(ひず しいこ)
九州在住のデザイン系フリーランス。心地よく感じられる作画を目指す。
ウェブサイト:https://honeysuckle-nagasaki.tumblr.com/

<目次>
第1章 サプライチェーンを知ろう
第2章 顧客から納期の前倒し要望
第3章 急な増産対応の依頼
第4章 値下げ要請に直面する
第5章 品質クレームにどう対応するのか

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製造業における「サプライチェーン」は「原材料を調達して、生産活動を行い、そして、顧客の手元に製品をお届けするまでの一連の流れ」を指します。この流れを止めないよう、企業は部門を越えて情報を共有し、最適な取り組みを行っています。
 こうした中で、営業担当者は顧客からのさまざまな変更要請を受ける窓口です。顧客の要請に満足に応えるために、営業担当者は自社のサプライチェーンを把握しておかなければなりません。これがスキルとなって、顧客の信頼を得る基本になるのです。

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