大ロット生産と小ロット生産の「いいとこどり」 中ロット生産とは?
大ロット生産と小ロット生産には、それぞれメリットとデメリットがあるため、企業は自社の生産効率やお客様の動向などを踏まえて、どちらがわが社にとって適しているのかを考える必要があります。そこで、中ロット生産という折衷案もあります。中ロット生産も、明確な定義はありませんので、ざっくりと多過ぎず少な過ぎず生産をすると考えて差し支えありません。数か月分の出荷を賄えるような大ロット生産ではなく、1回の出荷だけしか作らない小ロット生産でもなく、必要な量よりも少しだけ多く作るといったイメージです。
大ロット生産と小ロット生産の「いいとこどり」を狙った考え方で、大量に不動在庫ができるリスクを抑えると同時に、ギリギリではなく少しだけ余裕をもった生産をすることで、大ロット生産と小ロット生産のデメリットをできるだけ回避しようとする考え方です。
しかし折衷案というのは注意が必要です。うまくいけば「いいとこどり」を実現できますが、失敗する可能性もあるのです。大ロット生産で徹底した効率化を追求するわけでもなく、小ロット生産で徹底した不動在庫のゼロ化を追求するわけでもない、いわば中途半端にしかメリットを得られないばかりか、中途半端にデメリットも残るといった危険性もあるので、よく考えないで安易に折衷案に飛びつくことは避けるべきです。
もう一つ、覚えておくと良い考え方に「1個流し生産」があります。小ロット生産を究極に突き詰めると、製品を1個ずつ生産する(ロットサイズは1個)状態になります。1個流し生産の説明は複雑なので、ざっくりと製品を一つ一つ個別に生産することだと考えて差し支えありません。
お客様のニーズが多様化して、多品種少量生産が進むと、個別のお客様ごとにさまざまな仕様の製品を作る必要が出てきます。たとえば、自動車工場では、同じ車種であっても車体の色、内装、オプションの有無など、お客様の要求がさまざまあるため、個別のお客様ごとに微妙に異なる製品を完成させる必要があります。このような場合に、製品を一つ一つ個別に生産する1個流し生産が適しています。
ただし、1個流し生産を実施するためには、生産工程で生産される製品の一つ一つに原材料を個別に用意したり、生産される製品の仕様がすべて異なることに対して、生産現場に適切な指示をしたりするなど、とても高度な管理技術が必要になります。このような高度な管理技術を持った工場は、お客様からの個別要求にも高いレベルで対応することが可能になります。
<書籍紹介>
書名:まんがでわかるサプライチェーン 知っておくべき調達・生産・販売の流れ
著者名:古谷賢一 著/日豆思惟子 作画
判型:A5判
総頁数:192頁
税込み価格:2,200円
<販売サイト>
Amazon
Rakuten ブックス
Nikkan BookStore
<著者略歴>
〇著者
古谷 賢一(ふるたに けんいち)
株式会社ジェムコ日本経営 プリンシパル本部 本部長コンサルタント
大阪産業大学経営学部商学科非常勤講師
【資格】公益社団法人全日本能率連盟認定マスター・マネジメント・コンサルタント、ICMCI(国際公認経営コンサルティング協議会)認定コンサルタント、MBA(経営学修士)
【略歴】大手鉄鋼メーカーにて、主に電子回路モジュールおよびコンピュータなど情報機器の開発製造事業に従事。開発・設計・製造・生産技術・品質保証・品質管理等の業務に従事し、本社より分社した事業会社の品質保証責任者、生産技術部門長および海外生産子会社(フィリピン、中国)の品質管理責任者を歴任。生産子会社・協力工場や、部材ベンダー・取引先へのものづくり指導、生産技術指導、品質指導を、国内外問わず多く手がけている。
その後、ジェムコ日本経営に入社。経営管理、人材育成から、品質改善支援、ものづくり革新支援など幅広い分野に従事し、"地に足がついた活動"をモットーに、現場に密着し、きめ細かい実践指導は顧客から高い評価を得ている。
タイ、マレーシア、フィリピン、ベトナムおよびハンガリーなど、海外での支援実績も多数あり。
【著書】『工場長の教科書』『在庫戦略の教科書』(共に日経BP)。雑誌『工場管理』(日刊工業新聞社)にて「Z世代の新人育成バイブル」を連載。『工場管理』『型技術』(同)にて寄稿多数。
【専門分野】経営管理・経営戦略、ものづくり現場改革・生産合理化、品質管理・品質改善、組織・人材開発
〇作画
日豆 思惟子(ひず しいこ)
九州在住のデザイン系フリーランス。心地よく感じられる作画を目指す。
ウェブサイト:https://honeysuckle-nagasaki.tumblr.com/
<目次>
第1章 サプライチェーンを知ろう
第2章 顧客から納期の前倒し要望
第3章 急な増産対応の依頼
第4章 値下げ要請に直面する
第5章 品質クレームにどう対応するのか
特集・連載情報
こうした中で、営業担当者は顧客からのさまざまな変更要請を受ける窓口です。顧客の要請に満足に応えるために、営業担当者は自社のサプライチェーンを把握しておかなければなりません。これがスキルとなって、顧客の信頼を得る基本になるのです。