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大和ハウスが導入、住宅の施工状態をAI判定する技術の効果

大和ハウスが導入、住宅の施工状態をAI判定する技術の効果

タブレット端末で検査の対象を撮影し、適切な施工がなされているかをAI判定する

均質な画像を収集、学習

ギアヌーヴ(東京都港区、斉藤恵子社長)は建設業界を主なターゲットに現場の状況を遠隔で確認できるシステムを展開している。2023年には同システムに人工知能(AI)を組み込んだ施工状況の判定システムを大和ハウス工業が導入。住宅の建築現場における確認工程を自動化した。建設業界は職人の高齢化や人手不足に悩まされており、デジタル変革(DX)による業務効率化に注目が集まる。

主力システムの「現場ドットネット」では、作業者が現場に設置されたタブレット端末で作業状態を撮影すると即時に画像がサーバーに送られ、監督者がウェブ上でいつでも状況を確認できる。報告書も自動作成され現場の負担を減らせる。住宅メーカーの場合、施工は下請けの工務店などが行い、メーカーの監督者は複数の現場を並行して確認して回る。このため、現場を訪れなくても状況が分かるシステムは業務効率化に効果的だった。

一方、集まる画像データ量が膨大になると確認が難しい。そこで現場ドットネットの仕組みにAI判定を加えた「AIジュークア」を開発した。サーバーに送られた画像をさらに顧客ごとの判定基準を搭載したサーバーに送り、基準を満たしているか判定する。結果は元サーバーを通じて即時にタブレットに送られ、合格した画像が顧客の基幹システムに格納される。

大和ハウスは品質保証のため施工状況を撮影・保管している。しかし個人の携帯電話などで撮影され、画像の大きさや精度にバラつきがあった。また工程が進んでからまとめて画像を送ってしまい、すぐ確認できないこともあった。そこで一部地域で先行してタブレットを導入し、効率化しながらAI開発に必要な学習データを集めた。AIジュークア導入時点では数百の検査項目のうち、AI判定できる項目は3項目にとどまったが、集まった画像を元に再度学習を行い、4月までに50項目まで増やす計画だ。

ギアヌーヴの強みは現場に設置するタブレットの納品・管理も行うため、学習に適した質の良い均一な画像を大量に集められる点にある。斉藤社長はAI開発を子どものしつけに例え、「多言語で教えても学習できないのと同じく、バラバラの画像では学習データになり得ない」と話す。

今後は大和ハウスのAIを深化させるとともに、他の住宅メーカーへの水平展開を目指している。また、機能を応用して、損害保険業界などへの展開も視野に入れている。(田中薫)

日刊工業新聞 2024年02月09日

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