積水ハウスの「戸建て住宅」米を主戦場に、巨額投資で問われる実力
積水ハウスが過去最大規模のM&A(合併・買収)で、戸建住宅事業の主戦場を米国に移そうとしている。米国MDCホールディングス(コロラド州)を49億ドル(約7200億円)で買収すると決定。2024年2―7月期中の手続き完了を目指す。買収により米国での供給戸数は22年の合算ベースで1万5000戸を超え、米国5位に躍り出る。米国で展開する日本勢ではトップとなる見通しだ。日本市場が将来的に先細る中、戸建住宅需要が旺盛な米国市場で自社技術を移植し、成長戦略を描く。
「これで大規模なM&Aはいったん完了する。今後は当社の技術や考えを移植することに専念していく」。仲井嘉浩社長はMDC買収の意義を説明した。
積水ハウスは17年のウッドサイド・ホームズ(ユタ州)買収を契機に、米国戸建住宅事業へ本格参入。ただ22年の供給戸数は5357戸で、住友林業、大和ハウス工業の後塵(こうじん)を拝していた。今回の買収で、西部中心の8州から南東部を加えた16州にエリアを拡大。25年に海外で1万戸の供給目標を掲げていたが、一気に前倒し達成。さらに日本での戸建住宅供給戸数1万戸程度をも大きく上回ることになる。
米国強化の背景にあるのは、日本での人口減少に伴う市場の先細りだ。中長期的な市場縮小は避けられず、業界全体でも危機感は強く、各社ともに米国で投資を積極化している。また大和ハウスは、事業施設や商業施設などの非住宅分野を強化するなど多角化が顕著。ただ積水ハウスはそうした戦略は採らず、あくまで戸建住宅事業で勝負をかける。
米国では今後、現地で主流のツーバイフォー工法への同社技術の移植や、日本での主力木造住宅「シャーウッド」の展開強化によって成長を加速する。仲井社長はMDCについて「50年の歴史と強固なガバナンス体制を持つ。ソリッドなプラットフォームだ」と評価する。MDCを中核に米国事業をどう成長させていくことができるのか。積水ハウスのグローバル企業としての実力があらためて問われることになる。