運転支援で需要急拡大…小糸製作所が「LiDAR」売上高600億円へ
小糸製作所は新規に立ち上げた高性能センサー「LiDAR(ライダー)」事業について、2030年度までに年間売上高を600億円規模に成長させる方針だ。車の先進運転支援システム(ADAS)や自動運転の分野を主対象に提案・受注し、まず200メートル程度の計測が可能な中距離用ライダーを量産する。周囲を把握する「目」となるライダーは運転支援分野で需要が急拡大する見通し。中国勢や欧米勢が攻勢を強める中、小糸は高耐久性などを訴求し市場を開拓する。
小糸はライダーの製造・販売を手がける米セプトンと18年から共同開発に乗り出し、23年に子会社化も決めた。セプトンのライダーは摺動(しゅうどう)部がないため、振動に強いなど高い耐久性を有する。ダンプトラックや農業機械などへの搭載にも有効という。
共同開発では、セプトンは搭載車種を見据えたデザインや企画を担当した。一方、小糸はハードウエア設計や品質管理を担い、静岡工場(静岡市清水区)で量産する。今後、中距離用ライダーに加え、農機などに適した40メートル程度の短距離用、スポーツカーなど高速車両に向く300メートル程度の長距離用ライダーを取り揃えて提案を強化する。
ライダーは対象物までの距離や方向といった位置情報を高精度に測定できる。カメラに比べて割高だが、運転支援分野などでの搭載数の増加に伴い量産効果によるコスト低減が期待できる。ライダーは視野角が広く、カメラより少ない台数で測定できることからコストパフォーマンスにも優れるとされる。
また位置情報を点群データで取得できる特徴を生かし、小糸は車載以外の用途も検討する。ライダーを搭載した移動体検知システムを開発しており、人物を特定しない形で人の動きを把握できるようにした。すでに商業施設などから引き合いがあるという。来店者のプライバシーに配慮しながら人流に基づく需要予測を行ったり、駐車場の利用状況を把握したりするなどの利用を想定している。
調査会社の富士キメラ総研(東京都中央区)によると、ライダーの世界市場は29年に22年比で12倍となる7741億円に膨らむ見通し。完全自動運転の実現に必要な部品とみられており、禾賽科技(ヘサイテクノロジー)など自動運転技術を推進する中国メーカーが市場を席巻している。