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ビール回帰本格化、メーカーが訴求する「情緒的な価値」の中身

ビール回帰本格化、メーカーが訴求する「情緒的な価値」の中身

キリンビールは17年ぶりに新ブランドを投入する(右が堀口社長)

ビール大手4社の2024年事業方針が11日までに出そろい、ビールカテゴリーを強化する傾向が鮮明になった。ビール類(ビール、発泡酒、第三のビール)酒税の26年の一本化に向けて需要のシフトが見込めるビールに4社が攻勢を強める。各社が主力ブランドを中心にリニューアルなどでおいしさに加えて情緒的な価値を訴求する。合わせて付加価値の高いプレミアムビールの強化策も打ち出している。(編集委員・井上雅太郎)

「ビールへの安定した流れが続く」と松山一雄アサヒビール社長が指摘するように、各社は24年もビールカテゴリーの需要増を見込む。ただ、ビール類の総需要では前年比数%の減少になる見通しが大勢だ。そのためビール回帰を本格化するとともに、さらなる付加価値化を進める戦略をとる。

アサヒビールは主力の「スーパードライ」で若年層が手に取りやすいスタイリッシュな缶容器「スマート缶」を2月27日に投入するほか、4月下旬にブランドの世界観を体験できるコンセプトショップを東京・銀座に開設する。プロモーションも強化し、24年に前年比1・6%増の7395万ケース(1ケースは大瓶20本)の販売を見込む。さらにプレミアムビール「アサヒ食彩」をコンビニエンスストア限定から全業態販売に移行する。ビール類の24年売上高で前年比1・6%増の6210億円を目指す。

キリンビールは主力の「一番搾り」で多様なラインアップによりニーズの変化に対応する。高付加価値のクラフトビール「スプリングバレー」を3月12日にリニューアルする。ホップの特徴を最大限に生かすほか、手に取りやすいパッケージデザインを採用する。さらに詳細は明らかにしていないが、スタンダードビールで同社として17年ぶりの新ブランドを立ち上げる。堀口英樹社長は「成長するビール強化の一環で、『一番搾り』に次ぐブランドに育てる」と期待する。

サントリーは「多様化するニーズに対応するポートフォリオはできた。ビールと業務用に注力する」(多田寅常務執行役員)と強調。主力「ザ・プレミアム・モルツ」のブランド戦略を強化し、プレミアムビールの存在感を高める。23年に発売した「サントリー生ビール」は2月にリニューアルするほか、3月5日に業務用を展開する。生産も2工場体制から全4工場体制に移行する。

サッポロビールも主力の「黒ラベル」を2月にリニューアルするほか、体験イベントを3月27日から全国11カ所で開催する。プレミアムビール「ヱビス」では2月から8年ぶりの刷新を実施。発祥の地の東京・恵比寿には醸造施設を伴うブランド体験拠点「YEBISU BREWERY TOKYO」を4月3日に開設する。野瀬裕之社長は「エリアを生かしたビールマーケティングにより物語をつくる」と述べた。

日刊工業新聞 2024年01月12日

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