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「酔う→楽しむ」時代、ビールメーカーが訴求する多様性

「酔う→楽しむ」時代、ビールメーカーが訴求する多様性

キリンのクラフトビール「スプリングバレー」のラインアップ

度数・飲み方・香りで差別化

ビール大手各社はビールカテゴリーで、さまざまなライフスタイルに対応する商品開発に注力している。同カテゴリーでは10月以降の酒税改正で減税になるため注目される中、市場活性化に多様性を訴求する商品が目立つ。アサヒビールはアルコール度数をミドルレンジの3・5%に設定したビールで、新しいライフスタイルに合う間口の広さを強調。キリンビールはクラフトビールを拡充し、香りや色といった多様性の楽しみ方を訴求する。(編集委員・井上雅太郎)

ビールはかつての「酔うために飲む」という時代から、「飲用時間を楽しむ」というライフスタイルに変化している。市場活性化には画一的なビールではない多様性が求められており、商品として進化する局面といえる。

「ビールはアルコール5%がほとんどで多様性が少ない。ミドルレンジで間口の広い未来志向のビールとして提案する」。松山一雄アサヒビール社長がPRするのは10月11日に発売する「アサヒスーパードライ ドライクリスタル」だ。アルコール度数を3・5%に抑えながら、ドイツ産ホップを一部に採用し、発酵度を高めるなどで飲み応えを実現した。グローバルでも飲用時間を楽しむのが潮流でアルコール度数3・5%以下が主流になっているという。

「ビールで代表的なピルスナーは長期的には減るだろう。クラフトビールで多様性の新たな価値を提供し成長を期待する」と、堀口英樹キリンビール社長は強調する。10月24日に「スプリングバレー」ブランドの新商品「JAPAN ALE〈香〉」を発売する。自社開発ホップ「ムラカミセブン」を一部採用し、柑橘(かんきつ)系の香りが特徴。メーンの「豊潤」と白ビールの「シルクエール〈白〉」のラインアップに、「JAPAN ALE〈香〉」を加えて「香り」という新しい切り口を打ち出す。

また、多様性のある飲み方を提案しているのがサントリーのカスタムビール「ビアボール」だ。西田英一郎サントリー取締役常務執行役員ビールカンパニー社長が「ビール市場活性化に新たな価値を届けたい」と2022年10月に発売した。アルコール度数16%の原液を炭酸水でそれぞれの好みの濃さに割って飲む。23年は「地元ビアボール」と称して47都道府県のご当地素材と組み合わせた飲み方を紹介している。

ビール類の酒税はこの10月の改正を経て26年10月に一本化される。ビールカテゴリーは減税になるため、追い風になると見られている。しかし、ピルスナー一辺倒の商品展開では需要の漸減傾向に歯止めをかけるのは難しい。新たなライフスタイルに応える多様性のある飲み物への進化が必要な局面に差し掛かっている。

日刊工業新聞 2023年09月25日

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