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サッポロは業界初の「生」開発…成長続く機能系ビール類、各社が拡大に注力

サッポロは業界初の「生」開発…成長続く機能系ビール類、各社が拡大に注力

「サッポロ生ビール ナナマル」は開発に7年を要した

ビール大手各社は健康志向につながる機能系ビール類の拡大に注力している。糖質やプリン体などを除去・低減し健康に配慮した機能系ビール類は、コロナ禍で高まった需要により今後も堅調な推移が見込まれる。サッポロビールの糖質とプリン体を70%低減したビール「サッポロ生ビール ナナマル」が発売から好調な滑り出し。キリンビールの糖質・プリン体を除去した発泡酒「淡麗プラチナダブル」も発売から9年連続の販売増になる見込みだ。(編集委員・井上雅太郎)

サッポロ待望「生」、滑り出し上々

機能系ビール類の販売数量(ビール4社合計)は、コロナ禍の2020年に前年比8%強の伸びで、21年も同10%弱と2年連続プラスを記録した。ただ22年以降は外食がしやすくなったことなどが影響し前年割れとなり、23年も1―11月累計で同4%半ばのマイナスになっている。

市場で見ると2年連続の減少はほぼ確実な状況だが、着実に伸びを確保しているブランドも少なくない。健康志向の高い消費者はリピート率が高く継続的な飲用につながるためだ。これを踏まえ各社は今後も機能系ビール類の商品開発を強めていく。

「機能系ビール類の需要は堅調。新提案のビールで特に機能系の第三のビール消費者をターゲットにする」。武内亮人サッポロビール常務執行役員は23年10月に発売したビール「ナナマル」について強調した。同10月の酒税改正によりビールが減税になったのに合わせて、糖質とプリン体をそれぞれ70%低減した業界初の生ビールを開発した。

ビールは飲料の中で尿酸値に影響するプリン体を比較的多く含む。痛風などを気にする消費者は飲用を控える必要もあり、プリン体の少ないビールのニーズにつながっている。ただビールは麦芽使用比率50%以上が必要で、プリン体は主に麦芽由来のため低減が難しい。味わいのバランスが取れたビール商品の開発に7年もの期間を要した。

それ以前にはプリン体を低減したビール類商品は発泡酒と第三のビールしかなかったため、新たにビールカテゴリーに選択肢を広げた。健康に気を使うビール愛好者向けに訴求して、販売を伸ばしている。「発売から11月末までで約40万ケース(1ケースは大瓶20本)を販売した。23年の販売目標は50万ケースで、ほぼ達成できる見通し」(サッポロビール)と好調さを明かす。

キリンロゴの「0」、視認性に工夫

「淡麗プラチナダブル」は発売から9年連続で販売増の見込み

キリンビールが発泡酒「淡麗プラチナダブル」を発売したのは14年。プリン体と糖質の両方をゼロにした“ダブル”の機能を訴求しながら、ビールらしい飲み応えを特徴にしている。健康を気づかう消費者の支持により需要増が続いている。

発売2年目に販売が倍増した後、前年比1ケタの伸びを続けた。21年にはコロナ禍で健康意識が高まったことで同17・1%増と急増した。その後も堅調な成長を確保している。「23年も前年と比べプラスの見込み。これを踏まえ発売から9年連続のプラスを達成できる」(キリンビール)と見通す。

同年10月にはフルリニューアルを実施した。原材料を見直して、よりビールに近い味わいに高めた。またパッケージも「0」のロゴを立体的にするなどで視認性を高めている。

同社はビール類の中で発泡酒カテゴリーのすみ分けについて、糖質を70%低減した「淡麗グリーンラベル」を中心に、ダブル機能の「淡麗プラチナダブル」など機能を特徴づけた商品を付加価値として位置付けている。今後も特徴のある機能開発を進めていく。

また、サントリーは機能系として糖質ゼロのビール「パーフェクトサントリービール(PSB)」と、糖質を75%低減した第三のビール「金麦〈糖質75%オフ〉」を展開する。

PSBは、アサヒ「スーパードライ」やキリン「一番搾り」などがしのぎを削るスタンダードビールのカテゴリーで、サントリーが機能系を切り口に21年に市場投入した。着実に販売実績を伸ばし、22年3月には業務用の樽(たる)詰めの販売を開始し現在約4500店で提供する。料飲店で飲める機能系ビールとしても訴求している。

23年の販売状況は健康志向の継続もあり、「1―11月で前年同期比4%増と堅調。リニューアルの効果も今後期待する」(サントリー)と底堅い需要を説明する。23年11月のリニューアルでは醸造条件を見直して、希少な「ダイヤモンド麦芽」のうま味を引き出し、麦芽由来の高い味わいに仕上げている。「金麦〈糖質75%オフ〉」も1―11月の販売で前年並みと健闘している。

アサヒビールの機能系は糖質ゼロの発泡酒「アサヒスタイルフリー」だ。16年には糖質に加えて、プリン体もゼロにした発泡酒「アサヒスタイルフリーパーフェクト」をラインアップに追加している。23年の販売は底堅く推移しているとしており、「機能系市場が4%ほど減少する中で、『スタイルフリー』の1―11月で前年同期比2%減と健闘している」(アサヒビール)と説明する。「パーフェクト」についても前年並み近い推移という。

日刊工業新聞 2024年01月04日

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