値上げ影響で低迷のパソコン市場、今後の動向に影響与えそうな要因
パソコン(PC)市場の低迷が続いている。MM総研(東京都港区)によると、2023年度上期(4―9月)の出荷台数は3年連続で減少した。背景にはテレワーク需要の反動減や、米マイクロソフトの基本ソフト(OS)「ウィンドウズ10」のサポート終了を前にした買い控えがあるようだ。為替の円安などを受けた製品単価上昇も影響している。メーカー各社は独自のサービスやハードウエアを訴求しながら需要喚起を図る。(阿部未沙子)
MM総研の調べでは、23年度上期のPCの国内出荷台数は前年同期比2・7%減の537万台だった。中村成希取締役研究部長は、出荷台数の減少を「値上げが大きな要因ではないか」と推測する。PCは部品を含めて海外拠点で生産する場合が多く、輸入商材の側面が強いため、為替の円安が価格上昇に響く。
実際、価格は上昇傾向にある。MM総研によると、23年度上期の平均出荷単価は同6000円増の11万5000円。中村取締役研究部長は「高性能な中央演算処理装置(CPU)やメモリーの搭載が増えた」ことも要因とみている。
MM総研は23年度通期の出荷台数を前年度比2・4%減の1095万台と予測する。市場が縮小基調にある中、メーカー各社は需要喚起の取り組みに力を注ぐ。日本HP(東京都港区)はKDDIと協業し、データ通信を5年間無制限に利用できるサービスを法人向けに始めた。日本HPの岡戸伸樹社長は「ユニークなサービス」と自信を示す。
シャープ子会社のダイナブック(東京都江東区)は、バッテリーを利用者自身で交換できる仕組みを採用し、使いやすさを向上した。法人向けの製品として展開してきたが、販売対象を拡大した格好だ。国内マーケティング本部の荻野孝広副本部長は「BツーC(対消費者)向けにも展開してほしいという声が大きかった」と振り返る。
こうしたメーカーの努力以外にも、今後の出荷台数増加を後押ししそうな要因はある。例えばウィンドウズ10のサポート期間が25年10月に終了することを踏まえて、24年度から企業でのPCの入れ替えが本格化する見通し。サポート期間が終了するとセキュリティー上の脆弱(ぜいじゃく)性が新たに見つかった場合でも対応が行われなくなる。法人需要の高まりに伴い、出荷台数の増加が予想される。
法人だけでなく教育現場でのPC需要も堅調に推移するとみられる。文部科学省は学校に1人1台の端末を配備する「GIGA(ギガ)スクール構想」について、端末の更新や予備機の整備などで23年度補正予算に2661億円を計上した。
PCメーカーはこうした需要を着実に取り込みつつ、一般消費者の関心を一段と喚起する観点で、さらなる付加価値の追求が求められる。