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スマホで衛星通信…KDDIがスペースXと提携拡大、携帯大手の競争に熱

スマホで衛星通信…KDDIがスペースXと提携拡大、携帯大手の競争に熱

KDDIの高橋社長(左)とスペースXのトム・オチネロ商業ビジネス担当上級副社長(30日、都内)

KDDIが米スペースX(カリフォルニア州)との提携を拡大する。スペースXの衛星通信サービス「スターリンク」を構成する衛星群と、自社の携帯通信サービス「au」のスマートフォンが直接通信できる仕組みを2024年にも提供すると30日発表した。空が見える状況であれば山間部や島しょ部などでも通信が可能となる。衛星通信分野でも携帯大手間の競争が熱を帯び始めた。(編集委員・水嶋真人)

「これからの差別化ポイントは、非日常をつなぐことだ」―。30日、都内で会見したKDDIの高橋誠社長は衛星群とスマホの直接通信サービスの利点をこう説明した。

まずはショートメッセージサービス(SMS)などのメッセージ送受信から開始し、音声通信やデータ通信にも順次対応する計画。既存の携帯電話の周波数帯を利用することから、スマホで衛星との通信ができる。従来では携帯通信の圏外だった山中や海上でも家族や友人とスマホで連絡が可能になる。

KDDIが静岡県熱海市の初島に設置した基地局。「スターリンク」を中継回線として用いている

KDDIやNTTドコモソフトバンクは、国内の人口カバー率99・9%超の携帯通信網を構築済み。日常をつなぐ部分での差別化は難しい状況となっている。通信エリアをめぐる競争は第5世代通信(5G)や4Gでの提供が困難だった山間部や島しょ部での通信に移行。ドコモやソフトバンクは高高度無人機(HAPS)を用いた携帯通信の実証を進めていた。

こうした中、KDDIは21年9月に米スペースXと業務提携し、スターリンク関連の技術検証を推進。22年12月には静岡県熱海市初島で、スターリンクをau通信網のバックホール(中継回線)として利用する基地局の運用を始めた。通常のau基地局には光ファイバー回線を利用しているが、光ファイバー回線を敷設しづらい地域をスターリンクの活用で補完する方針を示してきた。

山小屋でWi-Fi本格提供 “非日常つなぐ”

山間部などでは近距離無線通信のWi―Fi(ワイファイ)の提供にスターリンクを活用する取り組みも進めている。8月からは長野県や富山県で「山小屋Wi―Fi」の本格提供を開始。山小屋へのキャッシュレス決済やネット予約システムの導入、インターネットからの情報収集の実現などにつなげる。

ソフトバンクもスペースXと組み、9月下旬に法人向け衛星通信サービス「スターリンクビジネス」の提供を始める。高精度測位サービスと組み合わせて、山間部などの通信環境が整っていない場所で建設機械の操作を自動化するなどの利用を想定している。

個人向けだけでなく法人向けでも衛星通信サービスで携帯大手が火花を散らす中、より利用しやすい料金やサービス体系の確立が急がれる。

日刊工業新聞 2023年08月31日

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