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「物流2024年問題」解決へ…非運輸で動き拡大、3つの注目対策

「物流2024年問題」解決へ…非運輸で動き拡大、3つの注目対策

大王製紙は衛生吸収体商品の荷役に順次パレットを導入

トラックドライバー不足で物流の停滞が懸念される「物流の2024年問題」が迫ってきた。解決に向けた取り組みは、荷主企業や物流関連設備メーカー、IT企業などにも広がってきた。こうした非運輸事業者の動きにフォーカスし「設備・施設の高度化」「モーダルシフト」「デジタル化」の三つのテーマでリポートする。(特別取材班)

【設備・施設の高度化】無人リフト・パレタイズ導入

レンゴーは26年度までに八潮第二流通センター(埼玉県八潮市)の倉庫を自動化する。原紙1―2トンを運搬できる無人自動クランプリフトを24時間稼働し、夜間作業を軽減する。これに先立って24年度中に無線識別(RFID)タグを活用する製品管理システムを整備する。段ボール原紙出荷にあたるドライバーの待機時間で従来比50%削減を目指す。

王子ネピア(東京都中央区)は24年6月から愛知県、徳島県の工場でパレタイジング設備を稼働する。東京都内の工場に続く取り組みで、ティッシュペーパーなどを入れた段ボール箱を複数個シュリンクフィルムで巻き、パレットに積み付ける。従来、熟練者による手積み・手おろしが主流だった。今後パレットとフォークリフトを組み合わせ、作業効率を高める。大王製紙も家庭紙の全工場でパレット化したのに続き、紙おむつや生理用品など衛生吸収体商品について24年度からパレットを導入する。

東ソーは四日市事業所(三重県四日市市)でインフラ整備を進める。同所内の遊休地を活用し、約1万トンの樹脂製品を集約できる屋外保管場を建設する。23年度中に開設する予定。集荷の手間などを削減する。従来1時間かかっていたローリー入構から充填、退出までの作業を30分程度まで短縮した。

エーディエフ(大阪市西淀川区)は9月、密閉ボックスを「におわンテナー」として、あらためて製品化した。におわンテナーはもともと4年前に香料メーカーから、匂いが強いカレースパイスの保管用に3台受注したものだ。それが共同配送の拡大で注目され始めたという。タイヤやスパイス、キムチ、コーヒー、線香など匂いが強いものを、コメや被服など匂い移りしやすいものと混載するケースが増え始めたからだ。「取引先からも『ニーズがある』と評価を得ている」(島本敏社長)という。

【モーダルシフト】700km超輸送、重点転換

武田薬品工業は三菱倉庫とJR貨物と連携し、東京から北東北地区への輸送部分を鉄道へ切り替えた。鉄道輸送の前後の輸送のみをトラック輸送とした。品質管理データプラットフォーム「ML Chain(MLチェーン)」の活用に加え、温度管理が可能な鉄道コンテナの利用などで医薬品の品質保証体制を構築した。長距離トラック輸送の負担軽減により24年問題への対応に加え、輸送ルートでの二酸化炭素(CO2)排出量を約60%削減する効果も見込む。

モーダルシフトは物流の24年問題解決のための重要な手段となる(イメージ)

アサヒグループジャパンは国内のビール・飲料の物流で、500キロメートルを超えるトラック輸送について鉄道・船舶によるモーダルシフトを加速している。工場から配送拠点に製品を運ぶ「転送」では500キロメートルを超えるトラック輸送がある。単独ドライバーによる輸送が困難になる700キロメートル超の輸送を重点にシフトを加速する。500キロメートル超の輸送におけるモーダルシフト比率は50%超になっており、27年をめどに約60%に引き上げる方針だ。

アスリート(大阪府摂津市)は幹線輸送トラックを内航海運船舶に切り替えるモーダルシフトを加速する。兵庫・神戸港―福岡・北九州門司港間で現在10件実施している。これを28年までに同50件に増やす。また新たに神奈川・横須賀港―福岡・北九州門司港間でも23年度末まで海運を始め、28年までに同100件を目指す。需要に応じてトラックから鉄道へのシフトも視野に入れる。

【デジタル化】車両位置、GPSで追跡

JFE商事エレクトロニクス(東京都千代田区)は、トラックでけん引するトレーラーの位置情報などを即時に把握し、走行ルートや運用を最適化する「トラッキング(追跡)ソリューションサービス」を24年春に始める。パレットなどに取り付けた全地球測位システム(GPS)端末から収集したデータを容易に「見える化」する。ヤード内で当該のトレーラーを探す手間が省けるほか、ドライバーの運転時間削減などにつながる。鋼材や食品関連企業などからの受注を目指す。

東レエンジニアリングDソリューションズ(東京都中央区)は、運送会社などをターゲットにした独自の物流管理システムを24年度中に市場投入する。人工知能(AI)技術を使い倉庫内の出荷物管理や効率的な配送ルートを自動作成する既存システムに、トラックの運行・配送状況モニタリング、運転手のアルコールチェック管理などの機能を追加する。同社は「『儲かる物流』へと変革させたい」とする。

30年には輸送力が34%不足するとの試算もある(イメージ)

SCSKは運送事業者向けクラウド型車両管理サービス「運送革命」を提供中だ。車検証や請求書をスマートフォンアプリで撮影し車両の基本情報や整備情報を管理できる。荷待ちや荷役、運行などの業務時間も自動記録する。車両の取得価格や保険料、燃料費などの記録機能もある。適性運賃をシミュレーションできる機能も開発中。適正な運賃交渉で、運送事業者が適切な利益を得られるよう支援する。

混載・リレー輸送、荷主の協力不可欠

物流の2024年問題は、これまで天井知らずだったトラックドライバーの時間外労働の上限が、24年4月から年960時間に規制されることに伴う輸送力不足の問題だ。30年には輸送力が34%不足する可能性が試算されている。

これまで物流業界は人手不足や賃金の低さ、効率化の遅れなどの課題がある中、長時間の残業によって仕事を回し、賃金を増やす構造で成り立っていた。残業規制はこの構造を崩壊させる。効率化を急ぎ、従業員に十分な賃金を支払う収益を確保し、持続可能な形に変わることが急務だ。

効率化の方法はいくつもある。荷室の6割に荷物を積んでいたトラックが別の顧客から3割分の荷物の輸送を受注できれば、仕事をする時間は同じでより多く稼げる。1台のトラックでの長距離輸送を、複数台のリレー輸送や鉄道輸送などに切り替えれば、長時間労働を減らせる。

ただし、荷主の注文通りに運ぶという大前提があるため、物流業界だけで効率化を進めることは難しい。混載やリレー輸送を行うにも、荷主同士が条件を互いに譲り合うことや共通ルールなどが必要だ。今、荷主の一部が主導して先進的な効率化に取り組んでいる。これらが経済性や環境対応の面で成果を上げることで、国内産業界に広がることが期待される。

日刊工業新聞 2023年12月19日

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