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「石化」再編が大きな課題…三菱ケミカルG新社長の素顔

「石化」再編が大きな課題…三菱ケミカルG新社長の素顔

会見する筑本次期社長

三菱ケミカルグループは石油化学事業の再編に向け取り組みを加速する。2024年4月1日付で筑本学執行役エグゼクティブバイスプレジデント(59)が社長に昇格する人事を決めた。ジョンマーク・ギルソン社長(60)は退任する。課題の一つである石化事業の分離については23年内に共同企業体(JV)の形を示す計画だったが仕切り直す。同事業での経験が豊富な筑本氏のもと、24年10月をめどに石化再編を含めた事業戦略を示し、構造改革を急ぐ考え。

「現場の声に耳を傾け成長に向けた施策を実行していく」。筑本氏は都内の会見でこう意気込みを語った。ギルソン氏が築いた変革の基盤を生かし、取り巻く事業環境の中で次の成長に向けて適任だと判断された。指名委員会委員長の橋本孝之社外取締役は「石化事業のキャリアが長く、業界の広い人脈、社内の厚い人望を得ている」と評価した。

大きな課題となるのが石化の再編だ。次世代のあるべき再編には、社内外でより多くのコミュニケーションを通じ、良い形を生み出すことが重要と捉える。筑本氏は「社内は従業員ができるだけ楽しく働いてもらえる状況を作りたい。社外は(石化業界の)どの会社も知った優秀な方がトップにいるので率直な意見交換したい」と力を込める。

一方、炭素事業については「マーケット状況が悪い」(筑本氏)とし、23年度内に事業戦略を示す考え。

【略歴】筑本学氏 88年(昭63)東大経卒、同年三菱化成工業(現三菱ケミカル)入社。18年三菱ケミカルホールディングス(現三菱ケミカルグループ)執行役員、23年三菱ケミカルグループ執行役エグゼクティブバイスプレジデント。広島県出身。

素顔/三菱ケミカルグループ社長に就任する筑本学(ちくもと・まなぶ)氏/団結生む強い共感力

社長就任の打診を受けたのは18日ごろ。「驚いたが、是非受けさせていただきたい」と答えた。石油化学事業での経験が長いことに加え、経営企画室長なども経験した。心がけているのは「家業だと思って真剣にやる。周りの仲間を大切にする」ことだ。

指名委員会の橋本孝之委員長は「共感力が非常に強い。やりたいことを発信し、皆をつかんで共に前に進む力がある」と評価する。フットワークが軽く、定期的にさまざまな事業所に出向き、現場を重視する。情熱があり、周囲の厚い信頼につながっている。

事業ポートフォリオの変革、スペシャリティマテリアルズ(機能化学品)の成長など課せられた課題は多い。特に石化事業の再編は「川上から川下と複雑に絡み合っており、丁寧に会話を重ねていかないといけない」と、“共感力”を生かす構えだ。

趣味で水球やみこしをかつぐことも。家族は妻と二男一女。(山岸渉)


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日刊工業新聞 2023年12月25日

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