ニュースイッチ

売上収益4割増へ、三菱ケミカルが機能商品で鮮明に打ち出す成長戦略

売上収益4割増へ、三菱ケミカルが機能商品で鮮明に打ち出す成長戦略

EV・モビリティー分野で炭素繊維複合材料の需要を開拓(炭素繊維複合材料「カイロン ウルトラ」)

三菱ケミカルグループは機能商品を手がける「スペシャリティマテリアルズ」の成長戦略をより鮮明に打ち出す。電気自動車(EV)・モビリティー、デジタル、メディカル、食品の4分野に照準を合わせ、4分野合計の2025年度の売上収益を22年度比4割増、EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)で同2倍を目指す。また石化事業の分離については出資比率50対50での共同企業体(JV)の設立を想定し、23年内に発表する考えを改めて示した。

「25年度に設定したターゲットに向けて楽観的だ」。三菱ケミカルグループのジョンマーク・ギルソン社長は先日開いた成長戦略説明会で、こう力を込めた。25年度までの中期経営計画で掲げるEBITDA約6000億円などの目標達成を確実にするため、EV・モビリティーとデジタル、メディカル、食品の4分野を特にスペシャリティマテリアルズの中で成長ドライバーと位置づける。

EV・モビリティー向けでは完全子会社化するイタリアのCPC社と連携し、炭素繊維複合材料などで需要を開拓。一方、デジタル向けは半導体製造プロセス用の高機能洗浄剤や、フォトレジスト用感光性ポリマー「リソマックス」などに力を入れる。また、メディカル向けは長期インプラント用樹脂・素材に注力。食品向けは乳化剤などを生かす。

併せて、25年度までに追加で1200億円規模の事業売却などのポートフォリオ変革を検討する。スペシャリティマテリアルズの25年度の売上収益で4分野の構成比は約70%を目標とするが、ランディ・クイーン執行役エグゼクティブバイスプレジデントは「個人的にはコンサバティブ(保守的)な数字だ。うまくM&A(合併・買収)ができれば、75-80%になる」と語る。

これに対し、分離・独立の方針を示している石化事業は23年内、炭素事業は23年度内に詳細の発表を目指す。ギルソン社長は石化事業のJVについて「(出資比率)50対50を目指し、交渉は進んでいる」と言及。石化・炭素事業を所管する筑本学執行役エグゼクティブバイスプレジデントは「議論が肝の所で、お互いの事情もあり簡単には決まらない。再編して事業を好転させ、新規株式公開(IPO)に持って行けるようにしたい」との見通しを示した。


【関連記事】 日本が誇る総合素材メーカーはどこまで世界と戦えるか
日刊工業新聞 2023年10月23日

編集部のおすすめ