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年2万トン処理のCR設備立ち上げ、三菱ケミカルが構築する脱炭素モデル

年2万トン処理のCR設備立ち上げ、三菱ケミカルが構築する脱炭素モデル

三菱ケミカルグループは鹿島地区で素材から脱炭素モデルの構築を目指す(三菱ケミカル茨城事業所)

三菱ケミカルグループは鹿島臨海工業地帯で、リサイクル原料を生かした脱炭素モデルの構築に乗り出す。東部地区の三菱ケミカル茨城事業所(茨城県神栖市)で、廃プラスチックのケミカルリサイクル(CR)設備を2024年夏に本格稼働する計画。CRでの原料を生かし、供給先の誘導品各社に持続可能な製品の国際認証取得を呼びかける考えだ。実際にグループ傘下の日本ポリプロ(東京都千代田区)が同認証取得を目指すなど、素材から脱炭素化に向けた動きが広がりそうだ。

供給先に国際認証の取得促す

「リサイクルなどで原料が変わるのはチャンスだ。その中で茨城は先駆けて取り組んでいく」。三菱ケミカル茨城事業所の加藤大雄茨城事業所長はこう意気込む。

三菱ケミカルはENEOSと共同で、年間2万トンの処理能力のCR設備を立ち上げる。同設備は廃プラを独自技術で油化し、そこで得た軽質油などは基礎化学品の原料などになる。三菱ケミカルは廃プラ由来のエチレンやプロピレンなどを生産する。特性の異なる原料が混合される場合に、ある特性を持つ原料の投入量に応じて生産する製品の一部にその特性を割り当てる「マスバランス方式」で供給する考え。同茨城事業所は持続可能な製品の国際認証制度「ISCC PLUS認証」をエチレンやプロピレンなどで取得済みだ。

素材産業がうまく集積している東部地区の特徴を踏まえ、供給先の各社にも誘導品での同認証の取得を呼びかける考えで、CRを通じた品質を維持しつつ素材からの脱炭素化につなげる。

三菱ケミカルは茨城県との同地帯における循環型コンビナートの形成や、茨城臨海部を拠点としたカーボンニュートラル温室効果ガス〈GHG〉排出量実質ゼロ)産業拠点の創出に向けた戦略的パートナーシップ協定の連携も生かす。

東部地区に拠点を置く国内最大規模のポリプロピレン(PP)メーカーである日本ポリプロは、23年度中に同認証を取得する計画だ。鹿島工場(茨城県神栖市)で、24年夏以降のCRPPの製造開始を目指す。鹿島工場はパイプラインで三菱ケミカルからPP原料のプロピレンの供給を受けている。より川下のユーザーに環境配慮型の樹脂として提供する考えだ。日本ポリプロは全工場で認証取得を目指すほか、端材や使用済みプラを再生したマテリアルリサイクルPPの複合材を開発するなど、環境配慮型材料の普及に向けた下地を整える。

三菱ケミカルグループは石化事業の分離を明言しており、石化の共同企業体(JV)の設立を目指している。JVを通じて再編・統合することで石化事業の強化につなげる考えもある。

石化を含めた基礎化学品は、生産最適化や脱炭素時代にも稼げる事業体質への転換の重要性が高まっている。まずはCRの裾野拡大や環境配慮型製品の普及を通じ、鹿島地区から石化コンビナートの将来に向けた脱炭素化の仕組みづくりをけん引する構えだ。


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日刊工業新聞 2023年10月26日

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