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リチウム電池用セパレーターで新工場、旭化成が数千億円投じ一貫体制構築

リチウム電池用セパレーターで新工場、旭化成が数千億円投じ一貫体制構築

旭化成は北米のEV需要を見据えて新工場建設を本格検討する(同社の湿式セパレーター「ハイポア」)

旭化成は北米市場における電気自動車(EV)需要の拡大を見据え、リチウムイオン電池(LiB)用湿式セパレーターの一貫生産工場の新設に向けて本格的な検討に入った。まず米国に工場を建設し、2027年をめどに稼働する見通し。設備投資は3―4年かけて段階的に実施する方針で、投資総額は数千億円規模に膨らむ可能性がある。セパレーターの基材膜の生産から塗工までの一貫体制は日本だけだが、米国でも同様の体制を構築し、供給体制を強化して需要を取り込む。

旭化成が米国において一貫生産を検討しているのは、LiB用湿式セパレーター「ハイポア」。セパレーターは電池内の正極と負極を分離するために用いる絶縁材で、充放電に伴うリチウムイオンの行き来を妨げず、正極と負極の接触による短絡(ショート)の発生を防ぐ。現在、同社は建設地や生産規模など詳細な投資内容を詰めている段階で、23年度中もしくは24年度初めには意思決定する予定だ。

米国では利上げに伴うローン金利の負担増や充電インフラの整備の遅れなどで、足元のEV市場は一服感が出ているが、中長期的には中間層の消費者らもEVに乗り換えるEVシフトが進むとみられている。このため電池メーカー各社が設備投資を相次いで実施しているほか、北米における自動車メーカーの現地調達ニーズも拡大している。こうした動きに合わせ、新工場を設けて供給体制を強化し、北米地域で一定のシェア獲得を狙う。

同社はEV需要の拡大に備え、各地でセパレーター関連の投資を積極化している。10月には約400億円を投じ日本、米国、韓国の工場でハイポアの塗工能力を増強する計画を公表した。

一方、ハイポアの一貫生産工場については守山製造所(滋賀県守山市)のみだが、日向工場(宮崎県日向市)でも塗工工程を追加して一貫体制を整える計画。米国でも一貫生産できる工場を設け、中長期的な需要を獲得する。


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日刊工業新聞 2023年12月20日

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