“次世代EUVペリクル”25年にも実用化、三井化学が半導体微細化に対応
三井化学は2025―30年に、半導体の製造工程で使われる次世代の極端紫外線(EUV)ペリクルを実用化する方針だ。旭化成のペリクル事業を承継した新会社の技術力などを活用。最先端のEUV露光機に対応したカーボンナノチューブ(CNT)膜ペリクルの開発を目指す。半導体の微細化に伴いEUV露光機の高度化が進む中、半導体関連事業の成長に向けて次世代ペリクルを実用化し需要を取り込む。
ペリクルはフォトマスク(半導体回路の原版)の表面に装着する薄い保護膜。傷やホコリを付きにくくする機能があり、フォトマスクの検査・交換頻度を抑制し露光工程の生産性を向上できる。
次世代のEUVペリクル開発に関しては蘭ASMLや、ベルギー研究機関のimec(アイメック)と連携する。より微細化が進む半導体が開発される中、露光機の出力が高まるとみられており、透過性や耐久性などを高めたEUVペリクルを開発し需要に対応する。
三井化学は旭化成からペリクル事業を取得し、三井化学EMS(宮崎県延岡市)を7月に設立した。得意とする半導体前工程のEUVペリクルだけでなく、深紫外線(DUV)を光源とした露光工程で使用されるDUVペリクルを生産する。また旭化成の同事業の知見を活用。半導体パッケージにおいて高度化が求められる、後工程での3次元実装用ペリクルを生産し需要の獲得を目指す。これら一連のペリクル事業で相乗効果を創出する。
三井化学は半導体関連を担うICTソリューション事業を強化しており、台湾ではイクロステープの生産体制を増強するほか、半導体製造用ガスの需要獲得も目指す。また同社の名古屋工場(名古屋市南区)では24年5月に半導体関連の研究開発拠点が完成する予定で、人材育成などにつなげる。
これら一連の取り組みを通じ、30年度のICTソリューション事業のコア営業利益を700億円(23年度予想280億円)に引き上げる考えだ。
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