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稼働率9割超す、コスモの石油精製設備の秘訣

稼働率9割超す、コスモの石油精製設備の秘訣

製油所の要である常圧蒸留装置(コスモ石油千葉製油所)

コスモエネルギーホールディングス(HD)の石油精製設備が高い稼働率を維持している。業界平均の稼働率が8割程度なのに対し、コスモ石油は9割を上回る。ショートポジション戦略と呼ぶ需給調整に加え、操業管理システムの導入により安全操業レベルが向上したためだ。今後は製油所のデジタルプラント化を進め、さらなる高稼働・高効率操業を目指す。(根本英幸)

ショートポジション戦略とは、戦略的に石油精製能力を減らす一方で販売数量を拡大し、販売数量に比べて生産する装置能力が足りない状況をあえて作り出したことだ。

例えば、沸点の差を利用して原油からガソリン・軽油・重油などに分ける常圧蒸留装置の生産能力は、2013年4月時点で1日当たり63万5000バレル。これに対し、23年4月は同36万3000バレルと43%も削減した。13年に坂出製油所(香川県坂出市)を閉鎖したのに加え、16年に四日市製油所(三重県四日市市)の装置1基を廃棄したのが貢献した。

一方、ガソリン・灯油・軽油・A重油の販売数量は、13年度の1456万1000キロリットルから22年度は1664万8000キロリットルと14%も増加。17年にキグナス石油と資本業務提携し、コスモ系給油所約3000カ所に加え、キグナス系約500カ所に供給を始めた。

11年の爆発・炎上事故の記憶を留めるために建設したモニュメント

「11年の東日本大震災で大きな事故が発生し、競争力と安全性の高い製油所に生まれ変わった」と春井啓克コスモ石油取締役常務執行役員。千葉製油所(千葉県市原市)で貯蔵タンクが爆発・炎上し、13年度まで赤字決算を余儀なくされた。

だが14年度から業界平均並みの稼働率に回復し、黒字に転換。19―22年平均の稼働率は91%を達成した。さらに22―25年平均で94%という高稼働率に挑戦している。

そのための武器がデジタル化だ。担当者は「グーグルマップの世界観を製油所で実現する」と語る。点在する装置の運転データやフロー図、設計図などを見える化し、リアルタイムに運転状態を確認できる世界だ。

「エンジニアはデータを探す時間に忙殺される」ため、その作業を大幅に短縮化するのが狙いだ。その上で人工知能(AI)で膨大なデータを解析し、未来予測や効率的な運転方法を提案する。

データを収集し、監視・検査する方法として、センサーやカメラに加え、ロボットや飛行ロボット(ドローン)も活用する。すでに横河電機グループと共同でデジタル化の検討を始め、四日市製油所で4足歩行ロボットの実証実験に取り組んでいる。

ドローンでは20年から操縦士を育成し、約20人が操縦士の資格を持つ。赤外線カメラやガス検知機などを搭載し、石油タンクや高所にある製造設備など危険箇所の点検で活躍する。異常の自動検知や全自動航行など、人間以上の検知能力を期待している。

「デジタルプラント化を進め、収益性を高める」と禰津知徳コスモ石油取締役執行役員千葉製油所長は力を込めた。

日刊工業新聞 2023年12月14日

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