太陽光・風力で来年GWに出力制御、東電PGが「お願いする可能性がある」背景事情
東京電力パワーグリッド(PG)は2024年5月の大型連休(GW)に、太陽光・風力発電の出力制御を行う可能性を示した。電力10社の中では、これまで唯一実施していない。電気の使用量に合わせて発電量を調整する「中央給電指令所」の報道公開で、岡本浩副社長が「お願いする可能性がある」と述べた。
電気は水やガスのようにためられず、24時間365日絶え間なく発電し、供給しなければならない。ただ電気の使用量と発電量のバランスが崩れると、周波数が乱れ、安定供給ができなくなる。中央給電指令所は、刻々と変化する使用量を予測しながら、発電量を調整し、東日本の標準周波数である50ヘルツを保つようにする組織だ。
特に近年は、太陽光や風力発電が急増。天気に左右される太陽光・風力の発電量はコントロールできないため、他の電源で適切に調整しないと需給バランスが崩れ、安定した運用が難しくなる。
発電量が需要量を上回った場合、まず火力発電の出力を抑え、揚水発電のくみ上げ運転による需要創出や、地域間連系線で他エリアへの送電を実施する。それでも上回る場合はバイオマス発電、太陽光・風力発電の順に抑制する仕組みだ。
実際、管内で太陽光と風力が急増した九州電力は、18年から太陽光と風力の出力制御を実施。22年度は北海道・東北・中国・四国・沖縄の各電力へと広がり、23年は中部・北陸・関西電力が加わり、東京電力を除くすべてのエリアで出力制御が実施された。
東電PGは10月から試行的に、太陽光や風力など再生可能エネルギー電源の「出力制御までの余力」をキロワット単位で自社サイトに公開。再生エネの出力制御が見込まれる場合、でんき予報ホームページで3日先までの「出力制御見通し」を公表することにした。
50年のカーボンニュートラル(温室効果ガス〈GHG〉排出量実質ゼロ)に向けて、再生エネ電源はさらに増やす必要がある。ただ再生エネ電源の出力調整が続けば、折角発電した脱炭素電力を無駄に捨てることになる。それを極力避けるためにも、蓄電池や連系線の増強などの対策が求められる。