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内需不振で「値下げ輸出」…塩ビ市況、低迷長期化の背景事情

内需不振で「値下げ輸出」…塩ビ市況、低迷長期化の背景事情

海外の塩化ビニール樹脂プラント

中国産品の流入増など影響

塩化ビニール樹脂の市況低迷が長期化している。各国の貿易統計によると、2023年1―9月の塩ビ輸出量は前年比で増加した一方、輸出額は同2、3割程度減少した。内需の低迷から生産国は塩ビ輸出を増やし、アジア地域では取引価格の下落につながった。足元では利ざやの確保が厳しく、中国経済の停滞などで回復の糸口は見えづらい状況だ。各国の化学メーカーは利益確保に向け、これまで以上に難しいかじ取りを求められている。(大川諒介)

塩化ビニール樹脂は建築資材や上下水道などのインフラ材、農業資材など幅広い産業に使用される。各化学メーカーは内需をカバーしつつ、生産能力が限られる新興国などに輸出している。各社は2022年下期以降、不動産・インフラなどの内需低迷から輸出を増やした。日本では23年1―9月の塩ビ輸出量が前年比8・6%増の47万3447トン、輸出額は同23・8減の約554億円だった。

塩ビの世界最大の輸入国はインドだ。23年1―8月は前年比倍増のペースで輸入量を増やしており、アジアを中心に幅広い国から塩ビを買い入れている。

ただ、参考値となる国内大手の塩ビ輸出価格(大口向け)は、11月積みのインド向けが前月比80ドル安のトン当たり820ドル程度と2カ月続落。高成長を背景にインフラや農業など旺盛な需要が続く一方、中国産品の流入増や流通在庫の積み上がりなど、先行きに不透明感もある。

市場では不動産不況に伴う中国の需要減少が特に意識され、「中国産品が安値でアジア市場に流れている」(塩ビメーカー幹部)との見方がある。現地メーカーが在庫をさばくために価格を切り下げて輸出し、アジア市況の下押し圧力になっていると指摘される。

日本からの輸出による利益確保が難しくなり、見直しを図る国内メーカーも出てきた。トクヤマは「足元の状況が当面続くとみており、市況の悪い海外向け出荷を抑制していく」(横田浩社長)方針。川下を含め、値上げの浸透が進む国内向けを重視する。

国内の各社も今後の経済動向を注視する。カネカは「インフレ沈静化などで欧米の建築需要が回復基調にある」(田中稔社長)とし、化成品の需要回復を期待する。塩ビについても「米国や中国などの景気に左右されがちだが、インド需要は強さが継続している」(同)とみる。一方、東南アジアに製造拠点を持つAGCは「中国の建築・インフラ需要低迷は長期化するとの見方がある。新たな投資は慎重に対応したい」(宮地伸二副社長)とした。

塩ビは世界で堅調な需要が見込まれる一方、各地の経済情勢が需要に大きく影響する。22年下期以降の市況低迷が続く中、価格と需給の変化を適切に見極めるマネジメント力が試されている。


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日刊工業新聞 2023年12月04日

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