三菱ケミカルG・三井化学・旭化成…「脱炭素」前面の化学メーカーが訴求する新材料・新技術
化学各社が脱炭素への貢献に向け、さまざまな製品・サービスの提案に力を入れている。三菱ケミカルグループや三井化学は、環境負荷低減に寄与する新素材を開発。旭化成は新たなリサイクル技術の開発などに取り組む。一方、住友化学は独自のカーボンフットプリント(CFP)算定システムの無償提供を進めている。化学製品はモノづくりの川上に位置するだけに、取り組みが脱炭素化を支える基盤になる。(山岸渉)
三菱ケミカルグループは特殊ポリカーボネート樹脂「ザンターXFシリーズ」を開発した。環境面での懸念が指摘される有機フッ素化合物(PFAS)を使わずに、高い難燃性を実現。スマートフォンのバックカバー向けなどの用途を想定する。
一方、三井化学や出光興産が出資するプライムポリマー(東京都中央区)は、ガラス中繊維強化ポリプロピレン(GFPP)を前面に押し出す。短繊維GFPP中の残存繊維を長く維持することで、長繊維GFPPに匹敵する機械物性を実現。コスト面と強度面を両立させたのが特徴だ。軽量化や環境負荷低減に向けて金属などの代替を狙う。
これに対し、旭化成はエンジニアリングプラスチックの発泡体材料「サンフォース」に磨きをかける。軽量性や難燃性の特徴から、リチウムイオン電池(LiB)のセルホルダー向けなどで需要があるとみる。また、KHネオケムは海洋生分解性樹脂材料や脂環式ジオールを提案する。ハイケム(東京都港区)は、中国メーカーなどとのネットワークが強みで、フランジカルボン酸などのバイオマスモノマーを訴求する。
リサイクルに関わる技術開発も広がりを見せる。プライムポリマーはポリエチレン(PE)シーラント「エボリュー」と、PE基材「ハイゼックス」を組み合わせ、リサイクルしやすい包材として開発する意向を示す。旭化成もポリアミド66「レオナ」で、形状不良や黒点不良などの規格外品ポリマーをリサイクルペレットとして活用。混練樹脂(コンパウンド)とすることにより、環境負荷の低い製品として提案する。三菱ケミカルアドバンスドマテリアルズ(東京都中央区)は、エンプラのリサイクルシステムを訴求する。
一方、住友化学はCFP算定システム「CFP―TOMO」の無償提供を拡大する。足元では、国内外の化学会社を中心に100社以上で活用。化学業界の製造プロセスの特徴に対応するシステムとして裾野を広げ、中小企業にもCFP対応をしやすくすることで業界全体での低炭素化の実現につなげたい考えだ。
【関連記事】 東レの子会社はなぜ強いのか
【関連記事】 日本が誇る総合素材メーカーはどこまで世界と戦えるか