スパコンの計算能力5倍に、産総研が「生成AI」開発強化
産業技術総合研究所は人工知能(AI)開発向けスーパーコンピューター「ABCI」の計算能力を5倍に拡充する。約400億円を投じ、2024年中の稼働を目指す。生成AIの開発強化に向けては計算資源の確保が不可欠だ。日本国内の計算資源は不足しており、経済産業省はABCIの拡充などを通じて確保を急ぐ。
産総研所管の経済産業省が23年度補正予算案にABCIの拡充費用を盛り込んだ。0・85エクサフロップス(エクサは100京、フロップスは浮動小数点の演算性能)の計算能力を5倍の4・25エクサフロップスに拡充する。現在のABCIのグラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU)を高性能な製品に入れ替え、計算能力を高める。産総研や理化学研究所、情報通信研究機構(NICT)など国立研究開発法人が優先的に使用する。企業への提供も想定する。
ABCIはAI開発向けのスーパーコンピューターとしては国内最大規模の計算能力を誇る。産総研のほか、日立製作所やAIスタートアップなど企業のAI開発でも利用されている。一方、対話型AI「チャットGPT」を開発した米オープンAIなどの有力企業は、ABCIよりも数倍大きい計算能力で開発を進める。
経産省は国内の計算資源を充実させるほか、生成AIを開発する企業の研究開発を支援する方針を示している。
日刊工業新聞 2023年11月14日