スパコン4冠「富岳」、最も期待される利用目的は何?

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理化学研究所が富士通と共同で開発を進めているスーパーコンピューター「富岳=写真」が、「TOP500」など主要スパコンランキングで4冠を達成した。オンラインで開催中のHPC(高性能計算技術)に関する国際会議「ISC2020」などで22日に発表された。主要な四つの指標で同時に1位を獲得するのは世界で初めて。

1位を獲得したのはTOP500のほか、産業利用など実際のアプリケーション(応用ソフト)で使用性能を評価する「HPCG」、人工知能(AI)計算などでの計算能力を評価する「HPL―AI」、大規模グラフの探索能力を評価する「Graph500」。全ての指標で2位と大差をつけた。ランキングは6月と11月の年2回公表されている。

TOP500での1位獲得は19年8月に運用を停止したスパコン「京」が2011年11月に獲得して以来。同ランクのリスト登録時の富岳の性能は、396装置の構成で415・53ペタフロップス(ペタは1000兆、フロップスは浮動小数点演算能力)。21年度に供用開始する。理研計算科学研究センターの松岡聡センター長は「新型コロナに代表される多くの困難な社会問題を解決していくだろう」と期待する。

日刊工業新聞2020年6月23日

コロナ対策に

文部科学省は7日、理化学研究所と富士通が共同開発中で、2021年度の供用開始を目指すスーパーコンピューター「富岳」の利用を前倒しし、20年度から試行的に活用すると発表した。新型コロナウイルス研究・対策のために計算資源を提供する。同日利用可能になった。一方、全国の国立大学や研究所などに設置されている主要なスパコンをネットワークで結び付けて運用中の「HPCI」も同様の目的で利用する研究者などを対象に臨時課題を15日に公募する。早ければ5月初旬から利用可能になる。

スパコン「富岳」を活用した研究課題は、現時点で新型コロナの治療薬候補分子の探索など四つを予定。課題の追加は理研と連携し、文科省が決定する。得られた成果は関係機関と連携し、国内外に広く公開する。

文科省委託事業「HPCIの運営」代表機関の高度情報科学技術研究機構は同日、関連機関の協力を得てHPCIシステム共用計算資源を使った「新型コロナウイルス感染症対応臨時課題」に関する募集を始めると発表した。「富岳」を除く「HPCI」スパコン資源を無償で提供する。新型コロナ研究で計算資源を必要とする課題が対象。募集対象は大学や企業などの新型コロナに関する研究者。審査から採択まで10日前後を想定。課題実施期間は21年3月末までの最大6カ月。

日刊工業新聞2020年4月8日

材料開発の変革に

計算シミュレーションを用いた材料開発が産業界に着実に浸透している。第一原理計算と呼ばれる計算科学的手法は、材料を構成する原子の種類と配列に立ち返り、量子力学に基づいた方程式を解いて材料特性を予測する。これに人工知能(AI)・データ科学を組み合わせた研究手法が材料開発に変革をもたらしつつある。

第一原理計算の特長は対象が特定の材料系に限られないことで、有機、無機材料に広く適用できる。また、入力パラメーターには実験による情報が不要なので、未知物質や新規材料への適用が可能である。このような量子シミュレーションは過去数十年間の研究を経て、近年の「京」コンピューターに代表されるハードウエアの改良、汎用ソフトウエアの整備、計算手法の基礎理論の発展が相まって、急速な広がりを見せている。学術分野では関連論文が毎年1万本以上発表され、それと比例して特許も増加している。

産業技術総合研究所(産総研)は、国内最大級の計算材料科学の研究組織「機能材料コンピュテーショナルデザイン研究センター」を抱え、ハブ拠点としてスパコンを用いた材料開発を先導している。その対象には電池、誘電体、光学材料など各種機能材料が含まれる。その一つが電動車の駆動モーターや風力発電機などに使用される高性能永久磁石である。高性能永久磁石はレアアースを含むため元素戦略上の課題も抱えており、性能、耐熱性、資源リスクなどの諸要因を考慮した利用環境対応型の材料設計が要求される。

産総研も参画する文部科学省・元素戦略プロジェクトでは、計算、計測、材料プロセスの連携により、世界最強のネオジム磁石の主相(主成分の化合物)を超える磁気特性の新化合物を提案し、その薄膜の作製技術を開発した。しかし、実際に使用するには、さまざまな置換元素や添加元素を加えて材料として作り込む必要がある。

課題の一つはプロトタイプ物質に対する置換元素や添加元素の膨大な数の組み合わせから、最適な組成と構造を決定することである。この問題に対応するため、AI・データ科学を活用した計算技術を開発してきた。

さらに2021年頃には「京」の後継機「富岳」が供用開始予定で、網羅的な第一原理計算が大きく進展すると期待される。「富岳」とAIの融合によって材料開発をどこまで加速できるか、新たな挑戦を楽しみにしている。

(文=産総研 機能材料コンピュテーショナルデザイン研究センター 多階層第一原理計算手法開発チーム 研究チーム長 三宅隆)

日刊工業新聞2020年2月20日

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