ニュースイッチ

熱伝導率を電気スイッチで切り替え、北大が開発「全固体熱トランジスタ」がスゴい

熱伝導率を電気スイッチで切り替え、北大が開発「全固体熱トランジスタ」がスゴい

全固体の熱トランジスタ(北大提供)

北海道大学の太田裕道教授らは、全固体の熱トランジスタを開発した。コバルト酸ストロンチウムを酸化還元し熱伝導率を切り替える。オンオフ比は4倍で熱の流れを遮るシャッターのように機能する。熱流制御の高度化につながる。

コバルト酸ストロンチウムの酸素量を電気化学反応で切り替える。コバルトとストロンチウム、酸素の組成が1対1対3では熱伝導率が3・8ワット/メートルケルビン。還元して酸素を引き抜いて組成が1対1対2になると0・95ワット/メートルケルビンになる。結晶に欠陥を多く含むため、ガラスと同程度の断熱性になる。

酸化還元で結晶構造が壊れないことを確認した。コバルト酸ストロンチウムの膜厚は60ナノメートル(ナノは10億分の1)で切り替えに30秒から60秒ほどかかる。酸素は空気中からとりこみ酸化物イオンが移動できる固体電解質を経由して供給する。

熱トランジスタをすべて固体で構成できる。従来技術は電解液などを用いているため素子化が難しかった。熱流を制御し集められると熱電変換素子で電力として回収できる。

日刊工業新聞 2023年02月24日

編集部のおすすめ